音楽との接し方

夏頃からこんな雑誌こんな雑誌を定期購読している。今から30年以上前、『初歩のラジオ』という、「これが初歩だったら応用は一体どこまで行っちまうんだ!」ってくらいハイレベルな記事が山盛りの雑誌を読んでいた。勿論理解などできる筈もなく、たまに本当に初歩向けの製作記事の通りに何か作ろうとして、ほとんど失敗するような、今から思えば、将来文系に進むことを予感させる少年時代を過ごした。

でも『初歩のラジオ』を読んで、HiFiオーディオという存在を知り、お年玉を貯めて、ケンクラフト(現在のケンウッド)のプリアンプキットを買った。結局プロの手を借りたが、完成したアンプは何年も私の勉強部屋の一角に座を占めていた。

高校、大学と文系に進み、演奏と鑑賞を趣味の両輪とする放蕩な生活を続けたが、自作オーディオに戻ることはなかった。財力が問題だった。大学専任者になるとまもなくPCの自作を始め、実用性を重視しつつ「作る」楽しみを味わう生活に落ち着いた。音楽は、MIDIと編曲、手兵の吹奏楽部を指揮してのオリジナルアレンジ作品自演という、音大も出ていない素人では普通できないような贅沢が可能であり、毎年、寒い季節になると棒を持って部室に出入りしていた。

音楽活動環境(と友人関係、食べ物等々)には恵まれた金沢生活が終わり、知り人ひとりいない甲府に移ると、「趣味」の質的低下は決定的となった。その上、父を亡くし、精神的に疲れ切った夏の始め、何かのはずみに、『初歩のラジオ』を読みふけっていたころの憧れを思い出した。

真空管アンプ

トランジスタやIC、LSIが出現する基礎となった真空管による増幅技術は、ラジオ、テレビ、初期のコンピュータを世に送ったが、先進国では真空管の生産などとっくに終わっていた。だが、『初歩のラジオ』で読んだ高圧、高温のガラス製部品を使ったアンプは、色褪せるどころか、手の届く現実として蘇った。主としてPCを目的に歩き回ることの多かった秋葉原に、そういった機器を扱う小店が沢山ある(あった)ことは分かっている。まだ雑誌も何点か発行されている。ネットのおかげで、キットの購入などいとも簡単だ。そう思ったら矢も楯もたまらず、一台のアンプキットを注文していた。
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