2007.12.12 水曜日 21:59
音楽との接し方
夏頃からこんな雑誌やこんな雑誌を定期購読している。今から30年以上前、『初歩のラジオ』という、「これが初歩だったら応用は一体どこまで行っちまうんだ!」ってくらいハイレベルな記事が山盛りの雑誌を読んでいた。勿論理解などできる筈もなく、たまに本当に初歩向けの製作記事の通りに何か作ろうとして、ほとんど失敗するような、今から思えば、将来文系に進むことを予感させる少年時代を過ごした。
でも『初歩のラジオ』を読んで、HiFiオーディオという存在を知り、お年玉を貯めて、ケンクラフト(現在のケンウッド)のプリアンプキットを買った。結局プロの手を借りたが、完成したアンプは何年も私の勉強部屋の一角に座を占めていた。
高校、大学と文系に進み、演奏と鑑賞を趣味の両輪とする放蕩な生活を続けたが、自作オーディオに戻ることはなかった。財力が問題だった。大学専任者になるとまもなくPCの自作を始め、実用性を重視しつつ「作る」楽しみを味わう生活に落ち着いた。音楽は、MIDIと編曲、手兵の吹奏楽部を指揮してのオリジナルアレンジ作品自演という、音大も出ていない素人では普通できないような贅沢が可能であり、毎年、寒い季節になると棒を持って部室に出入りしていた。
音楽活動環境(と友人関係、食べ物等々)には恵まれた金沢生活が終わり、知り人ひとりいない甲府に移ると、「趣味」の質的低下は決定的となった。その上、父を亡くし、精神的に疲れ切った夏の始め、何かのはずみに、『初歩のラジオ』を読みふけっていたころの憧れを思い出した。
トランジスタやIC、LSIが出現する基礎となった真空管による増幅技術は、ラジオ、テレビ、初期のコンピュータを世に送ったが、先進国では真空管の生産などとっくに終わっていた。だが、『初歩のラジオ』で読んだ高圧、高温のガラス製部品を使ったアンプは、色褪せるどころか、手の届く現実として蘇った。主としてPCを目的に歩き回ることの多かった秋葉原に、そういった機器を扱う小店が沢山ある(あった)ことは分かっている。まだ雑誌も何点か発行されている。ネットのおかげで、キットの購入などいとも簡単だ。そう思ったら矢も楯もたまらず、一台のアンプキットを注文していた。
でも『初歩のラジオ』を読んで、HiFiオーディオという存在を知り、お年玉を貯めて、ケンクラフト(現在のケンウッド)のプリアンプキットを買った。結局プロの手を借りたが、完成したアンプは何年も私の勉強部屋の一角に座を占めていた。
高校、大学と文系に進み、演奏と鑑賞を趣味の両輪とする放蕩な生活を続けたが、自作オーディオに戻ることはなかった。財力が問題だった。大学専任者になるとまもなくPCの自作を始め、実用性を重視しつつ「作る」楽しみを味わう生活に落ち着いた。音楽は、MIDIと編曲、手兵の吹奏楽部を指揮してのオリジナルアレンジ作品自演という、音大も出ていない素人では普通できないような贅沢が可能であり、毎年、寒い季節になると棒を持って部室に出入りしていた。
音楽活動環境(と友人関係、食べ物等々)には恵まれた金沢生活が終わり、知り人ひとりいない甲府に移ると、「趣味」の質的低下は決定的となった。その上、父を亡くし、精神的に疲れ切った夏の始め、何かのはずみに、『初歩のラジオ』を読みふけっていたころの憧れを思い出した。
真空管アンプ
トランジスタやIC、LSIが出現する基礎となった真空管による増幅技術は、ラジオ、テレビ、初期のコンピュータを世に送ったが、先進国では真空管の生産などとっくに終わっていた。だが、『初歩のラジオ』で読んだ高圧、高温のガラス製部品を使ったアンプは、色褪せるどころか、手の届く現実として蘇った。主としてPCを目的に歩き回ることの多かった秋葉原に、そういった機器を扱う小店が沢山ある(あった)ことは分かっている。まだ雑誌も何点か発行されている。ネットのおかげで、キットの購入などいとも簡単だ。そう思ったら矢も楯もたまらず、一台のアンプキットを注文していた。

昨年の冬に作り、会津の実家に設置したプリアンプの兄弟にあたるパワーアンプ、エレキットのTU-879S。買うだけ買っても時間がなく、箱を眺める日々が続いたが、ぽっかりと予定の空いたある日の夕方、久し振りに半田ごてを握ることにした。メーカーのHPでは6〜7時間かかるように書いてあるが、作り易く工夫されたプリント基板中心のキットは、正直いって簡単。4時間ほどで出来上がり、かつて大枚はたいた高級アンプに代ってCDとスピーカの間に修めた。
出てきた音は、鳥肌が立つほど艶やかで魅力的だった。半導体を使った高級アンプとは違う種類の「良い音」が鳴っている。それに真空管はビジュアル的にも優れている。

大満足のTU-879Sだが、これを選んだのには理由があった。数ある(あった?)真空管の中で、この機械は6L6GCという球を使うが、一定の規格を満たす球は改造なしで差し替えができるという。差し替え可能な球の中に、KT88があった。『初歩のラジオ』でも再三製作記事を読んだ人気の真空管。私はこのKT88、しかも今や貴重なイギリス製(最近はロシアか中国製がほとんどで、品質に問題のあるものもちらほら)の88を4本、引っ越し荷物に入れて大切に運んできた。前任大学の同僚、Y先生が餞別に下さったものだ。早くこの真空管を使いたい、でも自分で回路を組むなんて夢のまた夢。差し替え可能なキットは渡りに舟だった。

出力管を買えると、グラマラスな球の格好もあってイメージが変わる。出てくる音も、力強く、中低音に厚みが増した。そして、際限のない趣味がまた一つ、増えてしまった。
Y先生、ありがとうございました。15日の夕方、吹奏楽部の定期演奏会に客演するので、14日には顔を出します。
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