降る雪や

スラッシュドット ジャパン記事で紹介されたニコンのプレスリリースによると、同社はフィルムカメラについて、
大判カメラ用レンズ、引伸し用レンズにつきましては全品の生産を終了し、在庫がなくなり次第販売を終了いたします。また、フィルムカメラボディー、マニュアルフォーカス交換レンズ、その関連アクセサリーにつきましては一部を除き生産を終了し、在庫がなくなり次第販売を終了いたします。
と発表し、銀塩カメラからの事実上の撤退を明らかにした。

ニコンは言うまでもなく世界に冠たるカメラ、レンズメーカーであり、Fシリーズの筐体、ニッコノールレンズ群は、我が国写真史に不滅の光明を放ち続けると思っていた。大判カメラ用レンズ、引き伸ばしレンズがなくなることで、ハイアマチュア以上のユーザーの選択肢が大幅に狭まり、暗室での作業は歴史の彼方に消え去っていく。

かつて、部屋中に目張りをした上でセイフティーバッグの中でパトローネを開いたこと、温度計とストップウォッチを睨みながら引伸ばし機を操作したことも懐かしく思い出される。しっとりとした質感が大好きだったイルフォードの印画紙も、既に手に入らなくなった。

視力の極端な低下のせいでマニュアルフォーカスを諦めた、パソコンのスキル向上に伴い電子的処理を選択した、そしてそもそも根っからのキヤノンユーザーである自分ではあるが、カメラメーカーの巨人、日本光学の今回の決定には一抹の淋しさを禁じ得ない。

明治は遠くなりにけり(草田男)

まだこんなクズが存在している

本学の女性事務員さん(仮にAさんとしておこう)から携帯に電話が入った。彼女の自宅に不信な葉書が届いた、というのだ。とりあえず、最初の方を読み上げてもらい、即座に「架空請求です」と答えた。一通り音読してもらった後、彼女には「無視して下さい」と伝えた。これが12日の夜のこと。



今日、学校で、件の葉書を受け取った。ツッコミどころ満載で、どう考えても頭の悪いクズ共の仕業としか見えない。現物はコレ。
ハガキ

まず最初に、差出人の「法務局認定法人 民事訴訟通達管理機構」という名称でググってみた。すると出るわ出るわ。都道府県の消費者センターや警察、そして法務省まで、架空請求業者としてリストアップしている悪名高い連中である。ただ、この「民事訴訟通達管理機構」という名称は、比較的最近使われ始めたようだ。

さて、葉書の内容だが、


民事訴訟最終通告書
 訴訟の通告ってなんだろう。
 
訴訟番号
  多分、事件番号のつもりだな。

平成17(ル)第6051号
 「年」が抜けているのは、馬鹿だからか、それとも葉書の横幅に収まらないから消したのか。符号(ル)は財産権に対する強制執行事件か。すると債務名義は?。訴訟法と執行法の区別は、まぁクズ共には無理だろう。

消費料金
 知ってる漢字を無駄に並べるのは止めたほうがよいと思う。

契約会社、運営会社から民事訴訟として、訴状の提出をされました事を
 法律の用語は難しいといわれているが、所詮は日本語。せめて「訴状の」ではなく「訴状が」としてほしいものだ。

裁判手続きを開始させて頂きます。
 どうぞ。御随意に。

このままご連絡なき場合には原告側の主張が全面的に受理承諾され
 正式な訴状が送達され、裁判所が定める期日までに答弁書を提出しない場合には自白と看做されるが、そんなことは詐欺集団のクズ共の知ったことじゃなかろう。

執行証書
 債務名義の種類を知っているなら、事件番号の符号も確信犯かな。

給料差し押さえ
 本学の給料ではちょっと無理じゃ(あわわわわ・・・・)。

履行させていただきます
 履行というのは、債務者が債務内容の給付を行うこと。クズ共よ、お前たちは債権者のつもりなんだろ?

受け賜って
 × → 承って

プライバシー保護の為
 親書にあたらない葉書を送りつけておいて戯けたことをぬかすな。

最終通告とさせて頂きます
 ぜひそうしてもらいたい。馬鹿がうつりそうで嫌だ。

最終期日 平成18年1月13日
 送りつけられた相手方を慌てさせるための常套手段。
 
法務局認定法人 民事訴訟通達管理機構
 法務大臣が許可した債権回収会社なら存在する。貴様らは、全国的に詐欺組織と認定されている。

0120-049-688
 フリーダイヤルは、初期費用1,000円、月額基本料1,000円で使えるそうな。NTTもこんな形で悪用されるとは思わなかっただろう。国際電話でこれが繋がったら、非常に愉快なことになるのだが。

東京都千代田区鍛冶町1-4-16
 神田駅近くのガード沿いかな。



昨日の電話でAさんは「法律に詳しくないと、やっぱりびっくりしますよね」と語っていた。ひところ、世間を騒がせた「振り込め詐欺」等があまり報道されなくなったと思っていたが、馬鹿なクズ共は浜の真砂と同様、尽きることがないらしい。こういった架空請求は、そもそも全く根拠のない不正不当なものだから、「完全に無視」するのが唯一の対応である*1。もし電話などすると*2、今度は電話で脅迫的な取り立てが繰り返され、不愉快を重ねることになる。以前に出まわっていたこの手の葉書やメールには、振込先として個人名義の口座が記載されることが多かったが、高い金を出して買った仮名口座もすぐに潰されるから、振込先を指定せず、電話をかけさせて番号をつり上げる手口に変わったようだ。

さて、このクズ共の罪責だが、葉書を無視したことで何等損害が発生していないため、詐欺の未遂ということにしかならない。でも、最寄りの警察に届けておくのが良いだろう。


この手の詐欺に関する情報を収集、公開して被害防止に努めている「夢なら」というサイトが大変参考になるので、興味のある方は覗いてみてほしい。

  • *1 : 簡易裁判所の支払督促を利用する手口だけは例外。きちんと対応しないと手続が長引き、面倒なことになる。対応といっても相手は詐欺の実行犯だから、法廷に出てくることはないので、一日でかたが付く。
  • *2 : 番号非通知や公衆電話からは繋がらないことが多い。

敵国からの荷物

周南のマツノ書店から楽しみにしていた荷物が届いた。中身は、的野半介『江藤南白 上・下』他。マツノ書店は古書店だが、維新期史料の復刻に力を入れていて、今日では入手が困難な貴重史料を多数、世に送っている。土地柄、西軍関係の文献が圧倒的だが、『旧幕府』や『会津戊辰戦史』など、幕軍関係のものも含まれており、幕末維新に興味のある研究者なら、一度はお世話になったことがあるのではなかろうか。

今回復刻された『江藤南白』は、いうまでもなく、我が国司法制度の近代化を強力に推し進めた初代司法卿江藤新平の伝記である。江藤に関しては、毛利敏彦氏の一連の業績があり、特に『江藤新平』(中公新書)などは、容易に入手でき、かつ充実した内容を持った、江藤研究の定番でといえるものであるが、的野の『南白』は、極めて江藤寄りのスタンスで書かれているという点を考慮しなければならないとしても、江藤の事績を考える上では絶対に触れねばならない基本書である。

院生のころから、何度となく図書館から借り出したこの文献を入手したいと思い続けていたのだが、古書店の目録で目にすることも希で、今日まで書架に並べることがかなわなかった。その文献が復刻された。扱いに細心の注意を要する古書ではなく、箱入りの新本として入手できたのだ。

通常なら、必要な部分だけを抜き読みする類の文献だが、これだけは全巻を通読しようかと企んでいる。

人並みに

風邪などを引きかけています。日曜日、柳田から戻って、疲れ果てて寝てしまったのが良くなかったのか、はたまた強力なウィルスを持っているメンバーと一緒にいたのがまずかったのか、どうも鼻の奥あたりに不快感が張りついています。勉めて安静にし、とっとと退散してもらうつもりです。

もう10年以上、研究室のメインマシンで使っていたお気に入りのキーボードが、そろそろお釈迦になりそうです。当時1万円以上した超高級キーボードですが、メーカーは既に倒産してしまい、もう手に入れることができません。で、泣く泣くマウスで有名な外国資本メーカーのコードレスキーボードを買ってきました。

マウスは既にコードレスにしていたのですが、のたうち回るコードがないというのは、こんなに気持ちいいかと驚いています。一番大切なキータッチですが、「メンブレムでやや浅く、軽めのタッチ」という希望にぴったりで大変満足しています。自宅用のキーボードも換えたいけど、スペースがなぁ。

豪雪の奥能登

合宿の会場は、能登町(旧柳田村)アストロコテージ。洋室2、和室1、リビングダイニングという立派な貸しコテージ。そして一番の売りは、2Fに備えつけられたに天体望遠鏡とドーム。

しかし、記録的豪雪という最悪の状況でドームにも雪が積もりすぎ、完全に回転させることができない有り様。それでも一時的に雲が切れた初日の夕方、上空の月を視界に収め、その場に居合わせた数人で喚声をあげる。夜中にも何度か、雲の切れ間からまたたく星を観測。澄み切った大気のを突き抜け、何千、何万光年の彼方から届く光を、まさに手に取るように見ることが、このコテージでの最大の楽しみ。

4年生はそれぞれが持ち込んだノートパソコンで卒論執筆に励み、激励のために参加したOBOG諸君は、日頃の憂さを晴らすように歓談。町村合併の余波であろうか、損耗した備品の補充がなく、いささか寒い思いもしたが、同時在籍したことのない先輩後輩たちの懇親は確実に深まった。

朝食の合間、ひとときだけ太陽が顔を出したので、コテージの窓から隣の棟を写す。
一瞬の晴れ間

程なく吹雪になり、これ以上の撮影は断念。皆で雪まみれになりながら荷物を運び出し、逃げるように出発。1m以上の積雪と、雪の壁に挟まれた通路の写真は、残念ながら撮れなかった。

途中、能登国一宮気多大社に参拝。私の後厄通過御礼と、前厄に入る4年生たちの厄払い。参加できなかったメンバーへの土産なども調う。参拝後、悪路を抜け一路金沢へ。その後、金沢郊外で昼食を取り無事解散。当面は、4年生の卒論完成を楽しみに待つことにする。

卒論合宿スタート

大雪警報の出る中、奥能登までやって来た。卒論指導と、その後の食事会が主な内容で、食事は私が作る慣例になっている。

昨夜、数時間かけて料理とデザート2品ずつを仕上げ、現地で3品作る予定でいたのだが、今年の4年生のうち2人、バイトで包丁を握っている者が、見事に働いてくれる。何度となくこのイベントを実施しているが、私がグランシェフだけで済むのは初めて。

ブログの引っ越し

さくらインターネットのレンタルサーバーに引っ越してみました。

最大の理由は、「本務校サーバーに満足できないこと」です。本務校サーバーは2000年から運用していますが、最近では老朽化が進み、このブログのスクリプト"Serene Bach"が重くて辛抱できなくなりました。学内サーバーということでCGI等の利用にも制限があり、なにより、学外からメンテナンスができない、というセキュリティ重視の設定のため、何をするにも研究室に出向かなければならないという問題を抱えていました。数年前からコンテンツを外部プロバイダのHP領域に出していましたが、大きなブログスクリプトを走らせるには少々難があり、今回の決断に至りました。

引っ越し先は、(直感ですが)レスポンスが早く、当座使いたい機能が揃っているうえに、比較的安価で、現時点ではかなり満足しています。

同時にブログのタイトルを変更しようかと思ったのですが、まだ決まりません。引き続き、募集していますので、アイディアをお寄せ下さい>各位

光のどけき

日付が改まる頃、一家を代表して近所の天神様にお参りに行く。かつては本殿の扉すら開かれなかった社も、いつの頃からか、境内には篝火が焚かれ、氏子集が縁起物を売るようになった。三々五々集まる町内の人々。顔も分からぬ暗夜でも、「おめでとうございます」と言葉を交わしつつ、心静かに平穏な年明けを祝うことが恒例となった。見上げると夜空のあちこちに星が。しんしんと冷える。

陽が昇り、午前9時の気温が氷点下6度。もうちょっと早く外に出れば、ダイヤモンドダストが見えたかも、と思うくらい寒い。雪から生えたような庭木の枝には樹氷が。
庭の樹氷

会津では元日の朝、長命を祈って蕎麦を食べる。一家で挽きぐるみ生粉打ちの蕎麦を食べるのも、いつに変わらぬ年中行事。何の変哲もないが、この穏やかさが暖かい。

例年は自室に戻り、ブラームスの一番あたりを聴いて「音楽家」としての一年を始めるのだが、今年は信時潔『海道東征』を聴く。昨年後半から強まった「信時信仰」は新年でも変わらない。楽曲についての解説、感想は後日改めて稿を起すつもりだが、過剰な技巧とは全く無縁の、木訥で力強いこの音楽は、日本のオーケストラ作品の一つの頂点ともいえよう。現し世の荒海を漕ぎ渡る力をこの曲から授かりたい。
calendar
<< 睦月 2006 >>
SunMonTueWedThuFriSat
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
selected entries
categories
archives
recent comments
recent trackbacks
profile
others