無限軌道

季節労働のピークが過ぎたらしく、突然「あれやれ・これやれ」がなくなるという怪現象に直面し、ぽっかり空いた「自分の時間」に何をして良いか分からず、ただ呆然と座り込む情けなさ。書かなきゃいけない原稿は…、まあ置いといて(置くな!>自分)、あと半月、浩然の気を養うことが何より大切、かな。

先日購入したWindows7マシンはすこぶる順調に稼働しており、(結局作っちゃった)「ありあわせ2号」も古いソフト運用機兼データサーバとして書斎入り目前。ただ、この機体の電源ユニットは昇天寸前の危うさで、いくつものケミコンがパンクしていることは確認したんだけど、ニッパーもハンダごても入らないようなところで、もし直すとしたらアンプ一台作るくらいの手数になりそうで放置。この電源、ハイパワーと静音性で結構売れたと記憶しているが、封緘を切ってびっくりの粗悪さ。狭い筐体に余りに多くのケーブルを押し込んだため、基板がめいっぱい湾曲してる((((;゚Д゚)))))。数年前の某国の工業技術を垣間見る思いが。

先週末、無事に確定申告を済ませた(涙)。


いつも見てるけど頭が回らなくてエントリに出来なかった「ボ2ネタ」経由で、貸金業法等の改正の結果、大手消費者金融業者は今年6月以降、専業主婦(主夫)への貸し付けを中止するという。今次貸金業法の改正では、「悪名高い」グレーゾーン金利が廃止となり、悪質な取り立てへの規制が強まるなど、「良い改正」にも思えるが、一方で、多重債務問題への対応から貸し付け制限も盛り込まれている。所得を基準に返済能力を算定するため、専業主婦(主夫)が金融を受けようとする場合、配偶者の所得証明が必要になるというのだ。これでは、街角で貰ったティッシュペーパーの広告を読んで気軽に、とは行かない。

つらつらおもんみるに、私が法学を習い始めた頃、利息制限法(最高20%)と出資法(109.5%、現在は29.5%)の間に猛烈なグレーゾーンがあった。約定の金利を利息制限法所定の金利に引き直し、過払い金取り戻しの訴訟が頻発して、荒稼ぎをしていた街金がバタバタと倒れた。そこで貸金業法(いわゆるサラ金規制法)が作られ、数十%という高利が事実上公認された。規制法制定の契機となった「サラ金地獄」などという言葉はあっさり忘れられ、おりからのバブル景気とバブル崩壊後の長期不景気が金融界を歪め、長くサラ金業者の天国が続いた。金融業者のテレビコマーシャルが解禁されたのもこの頃だったと記憶している。

だが、平成18年の最高裁判決で、いわゆる「みなし弁済」という業者保護条項がほぼ否定され、再び過払い取り戻し訴訟が盛んになった。ここで弁護士事務所のテレビコマーシャルが解禁され、過払い訴訟を売り物にした事務所の名前がテレビで連呼されるようになった。「過払いバブル」という現象である。地裁民事部の新規受理件数の過半がこれであり、そのうらで、かつて殷賑を極めたサラ金業者は過払い金弁済の負担に耐えきれず、バタバタと倒れていく。まさにバブルそのもの。このバブルは、貸金業法の改正によりグレーゾーンが消えると終息する。なんだか複雑に入り組んだマッチポンプに見えなくもない。

ところで今の民法が出来た当時、「妻」は行為無能力者とされていた。夫がある限り妻の財産権は大きく制約されたのであるが、少なくとも妻がこっそり金銭消費貸借契約を結び、自己破産に陥るという悲劇は、法理論上起こらなかった。今次貸金業法改正では、専業に限ってだが「主婦(主夫)」が借り主となりにくい状況が発生する。この改正の直接の効果として、野放図な借金による家庭崩壊といった悲劇がいくらかは減るだろう。その点は評価できる。

だが、悪というイメージが定着しているにもかかわらず、グレーゾーンを公認したり、サラ金の広告を解禁したことについては、一応それらしい理由が用意されている。こういった高金利でも金を借りようという需要がある以上、供給を禁じてしまっては、更に悪質なヤミ金がはびこり、法の規制・統制がとれなくなる、というものだ。グレーゾーンが消え、それで儲けていたサラ金がつぶれ、サラ金の客層の一部が金融を受けられなくなることで、これまで金を借りて家計を回してきた人たちが突然、健全な経済生活を始める、などということがあるわけがない。

この問題は、無限軌道なのである。
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