里帰り

多分、月一程度の頻度で帰省しているから、狭い庭を眺めても、会津の季節の変化をしみじみ感じることが出来る。昨年、随分な数の花をつけた、とある山野草は、父が持っていってしまったのか、一つの芽も出なかった。およそ一年以上、手を入れる気持ちの余裕もないから、無秩序な部分が日に日に増えてくる。母の具合も落ち着いてきたことだし、次の帰省の折にはしっかりと草むしりでもするかな。

日曜日、父の一周忌の法要を、ごく内輪で執り行った。母はまだ長時間同じ姿勢でいることができず、私と、父方母方の親戚代表とで菩提寺に赴き経を読んで貰うだけの、はなはだ質素な法要だった。私が戻るまで準備らしい準備もできないことが気になっていたが、土曜日の明け方、夢に父が出てきた。法事の準備で、従兄と道を急いでいて、ふと振り返ると父が笑っている。諸々のドタバタやら不手際やら、許してくれているようだ。

同じ頃、秋葉ではとんでもない事件が起こっていた。次の土曜、秋葉に行く予定だ。キット屋さんの試聴会があり、ついでに設計中のアンプのパーツを調達しようと思っていた。

江戸時代は火除け地としての空き地だった。戦後、『ロクタル管の話』(柴田翔)で描かれた、進駐軍放出の電気部品を扱う露天商は、高度成長期に巨大な電器店街に成長した。卸も小売も渾然と、製品も部材も区別なく商う町は、ある意味豊かさを具現し、憧れを集めた。シロモノ家電もハイファイオーディオも、みんなその町にあった。DOS/Vパソコンの自作も、その町から始まった。私には理解できない不思議な風俗も、その町で生まれた。戦後一貫して猥雑なエネルギーを産み出し続けた町に、何が起こってしまったのか。

無性に腹立たしく、悲しい。

日常への回帰(見込?)

連休中に母親が退院しました。決して便利とはいえない田舎に一人暮らしですから、隣近所やら親戚やら、やたらと迷惑をかけてしまうことになり、一人息子としては違う意味で気苦労が絶えません。その上、12時間以上の手術と二日間の集中治療室で装着されていた自動血圧計がキツ過ぎたらしく、左手が効きません。原家の人間から手先の器用さを取ったら何が残るのか、と、口には出しませんが母も私も気に病んでいます。母の友人が毎日、揉み療治に通ってくれていますし、焦らず気長にリハビリするしかなさそうです。

帰省 = 病院通いという、それはそれはイヤな年月が流れました。福島県内の高機能病院はあらかた廻りつくした感があります。そろそろ、旧知の人々と会い、素朴な季節の実りを楽しむことを主たる目的に、のんびり帰省したいものです。

ところでこの冬、実家で除雪に使っていた井戸が涸れてしまいました。病気の独居老人に重い雪を片付けることなど出来る筈もなく、近所で一番最後まで雪を残す羽目になりました。同じ用途で地下水を使うところはどこでも、数年に一度は井戸の掘り直しが必要で、今年は当家の番に当たってしまったわけです。

連休の最後に実家で地鎮祭を行い、工事を待つだけになっていましたが、今日の夕方、母から電話があり、既に新しい井戸から水が出ており、あと一日か二日で工事が終わるとのことです。庭の水撒きにも難儀していましたから、更に一安心といったところですが、これで夏のボーナスが消えたかと思うと、実に寂しい心地がします。去年の、「ドカッ」と重い地響きをたてて舞い込んだ金沢市からの納税通知に、ほぼ全額を持っていかれたという悲しい記憶がありありと蘇ります。僅かでも残れば、珍しい真空管でも探すことにしましょう(爆)。

今年何度目の帰省だろう

25日金曜日、朝から電車で移動する。中央線からの乗り換えは何度となく経験したが、初めて、遅延のために予定した列車に乗り継げないという、最悪のパターンを経験した。気象変動や事故などわかりやすい理由ではなく、ラッシュの余波による遅延。春先、ラッシュに不慣れな新人が、すし詰めなりの秩序を乱し、数秒から数十秒ずつの遅れがやがて10分単位の遅延につながる。かつては毎年、山手線で経験したありがたくない春の風物(?)を、こんな場面で味わいたくはなかった。しかも乗換駅では駅員のいない窓口と長蛇の列。後日、機会を見て然るべく対応してくれようぞ。

会津に戻る前、郡山で入院している母を見舞う。もう一月半も入っているから病人も心配だが、こちらは親身なドクターが事細かに経過を話してくださるので、信頼して任せる以外のチョイスはない。それより心配なのは留守宅。毎日ご近所さんにお願いして猫の餌を足してもらっているが、猫だけで留守をさせればどういうことになるか・・・。

病院に行ってみると、月末に退院の可能性が出てきたという。安堵の胸をなでおろすと同時に、30日に出校しなければならない私に代わって母を迎えに行ってくれる親戚を頼まなければならない。なんとも間の悪いことよ。

ドクターから丁寧な説明を受け、やや長めの見舞いを終えて、ダイヤ改正のたびに不便になる磐越西線で会津へ。日のあるうちに帰り着いたが、家の荒れようは想像を絶する。なんといっても、外飼いの猫たちを自由に出入りさせるため、野良猫も自由に入り込んでしまう。帰宅して、臭気を少しでも抜くために窓を開けて回ると、家の一番奥、母の寝室で、猫たちのために用意しておいた寝床にでかい野良猫が我が家のように寛いでいる。私に気が付き、驚いて体を硬くする奴と私の距離は約2メートル。障害物が多すぎるし、投げつけるものも手にはない。攻撃手段を探す一瞬に、奴は母のベッドの下に逃げ込んだ。

大きなごみを取り除け、掃除機をかけ、厚手の除菌ウェットティシュであちこちを拭いて回る。母の寝室に戻ると、奴の姿はない。更に掃除を続けていくと、母の寝室のもっとも奥、本棚の上に奴が隠れているのに気づいた。奴が逃げようとすれば、私に向かってくるしかない。見回すと、1mのものさしが。これなら仮に奴にヒットしても、怪我する恐れもない。奴に逃げ道を与えつつ、しかし人間は怖いと思わせる程度の攻撃に踏み切る。

飛び出して、一目散に逃げていく奴が家から出た瞬間、やはりうちの餌を狙う別の野良(近所では狸と通称される嫌われ者)と鉢合わせし、野良同士でものすごい喧嘩が。後から出てみると、現場には狸の毛が大量に抜け落ち、黒が優勢であったことがわかる。長く近所のボスだった狸の影響力に陰りがでたということか。

一部始終を安全なところから見ていた次女、三女、長男がなにやら文句を言いながら寄ってくる。「撫でろ」「ごはん」はわかるが、あとは何を言っているかわからない。キャットフードを何種類か開けると、がつがつと食いつく。野良に気おされて食べるに食べられなかったのか。食べるとまた、なにやら大声で文句を言いながら寄ってくる。

随分遅い時間になって残りの二匹も現れ、全員の無事を確認。長女だけがキッと私を睨み、触らせてくれないが、他の四匹はくっついて離れない。こいつらを適当にあやしながら、数日間で荒れ果てた家をなんとかする、という、とんでもないミッションがスタートした。

楽しかった週末

娘たちとの楽しい休日の余韻が残っている。

キッチンのカウンターには、心のこもったおみやげの数々。食べ物以外に、O嬢が持ってきてくれたのがこの本。表紙だけで萌え死にそう。実家の猫たちは、こんな自然な表情を見せてはくれず、必ずカメラ目線になる。

二日間で撮りまくった写真を整理して、桃の花は右のPhotorollerに載せてみた。割と気に入った出来だったのが初日に参拝した武田神社で催されていた神楽。


舞が終わった後、楽師の座布団が「風林火山」になっていることに気づいた。

それはそれは温かい春の休日だった。

春の訪問者

甲府に移って二度目の春、加賀から愛娘たちが訪ねてくれた。にぎやかだった加賀の住まいの、およそ倍近い広さを持ちながら、とても静かだったここ、甲府の住まいが初めて、沸き返るような華やかさに満たされた。T嬢、K嬢、F嬢、O嬢、横浜からC嬢が、週末を使って甲府に、というか私に会いにやってきてくれたのだ。

身辺が騒がかったうえに、こちらで初めての集団の客ということで、満足にもてなすことができず、近いうちに再度の来訪を求めることとしたが、貴重な週末を使ってまで訪ねてやろうという彼女たちの心根が嬉しい。

夏から秋にかけて、甲府盆地名産の果物を存分に振る舞うから楽しみにしているように。

折りよく当地では桃の花が見ごろ。団子の前に花を楽しんだ。

春の帰省

15日の卒業式が終わるとすぐに甲府を離れ、会津に。前日まで汗を流した引越し後の整備もなんとか間に合い、研究室でゼミ生諸君と挨拶を交わすことができて、安堵の胸をなでおろしたが、同時刻に卒業式に出ている前任校の諸君とのコンタクトはいまいち。2週間前に会ったから、まぁ勘弁な。

昨年の今頃は転居の最中。でも今年は実家で猫の面倒を見る毎日。母親の具合はどうにか安定し、時間の許す限り猫とすごし、病人の心配事を減らしてやるのが任務。

帰った日にはまだ、日陰に随分な雪が残っていたが、消えたらすぐに福寿草が。今朝は黄色が見えはじめたと思ったら、午後にはきれいに咲いていた。

穏やかな日差しの下では、長い冬、室内で退屈しきっていた猫がのびのびと。雪囲いに使った木材の上で思いっきり伸びをするのは次女。

末っ子と四女にベッドを占領されてしまった。さて、どこで寝ようかな。

歴史は繰り返す?

$1 = \99
この水準を「バブル」と呼ばれた時代に見た記憶がある。まだユーロがなかった当時、10000円札は世界最高額の紙幣だった。土地神話が株価を押し上げ、バイト暮らしの学生でも結構な贅沢ができた。景気の拡大が急激過ぎたし、土地を巡って表向き法に従わなければならないゼネコンが、裏社会の力を借りて地上げを強行したり、社会のあちこちにひずみが生じたが、それでもある瞬間まで、国民の多くに経済的恩恵があった。企業の内部保留でほとんどすべての拡大分が消えてなくなった現下の景気拡大とは根本的に異なる。たしかこのころ、日銀が円売りドル買い介入で為替操作を行ったが、以来、一度も市場への介入を実施していないという。じゃあ、何をしているのだろうか。

ITバブルが崩壊したとき、株価の大幅下落が企業の含み益を吹き飛ばし、ただでさえ可処分所得の減少に苦しんでいた国民生活に、さらに冷や水をぶっかけた。でも日銀は何もしなかった。ゼロ金利では、金利引き下げというカンフルは打てない。

アメリカに発する株式市場の暴落が、全世界経済を飲み込んでからわずかに100年。第一次大戦後のベルサイユ体制が崩れ、ナチスの軍拡がヨーロッパを焦土にする、そのきっかけは「大恐慌」とよばれる。大恐慌の影響は、金解禁直後の日本から、貴重な金の大量流出という結果で終わるが、政府、中央銀行はとうとう効果的な対策を打ち出すことはなかった。

近代日本は、何度となく不景気を乗り越えた。ただ、一度も国家の政策で立ち直ったことはない。すべて「神の見えざる手」にすがって再起した。政府、日銀が「史上最長の景気拡大」と言い募る未曾有の不景気から立ち直る日は来るのだろうか。再起するだけの体力が、国民に残っているだろうか。毎朝、経済欄に目を通すたびに悲観的になっていくのは、私だけではあるまい。

慶事 再び

四月の半ば、金沢からOG会の面々が甲府に訪ねて来ることになっている。かつては月に一度は会食していた連中と、年に一、二度会うか会わないかになってしまい、なんとも所在なくアンプばかり作っていたが、初の集団による甲府来襲となった。どうやってもてなすか、今から楽しみだ。

が、そのメンバーの一人、M夫人から『急遽不参加』というメールが来た。理由は、大慶事だ。

「『おじいちゃん、お小遣いちょうだい』って言わせます」

目出度いから何でも可。特段の慈悲により赦して取らす。

本日の報告

各地で被害が出ているようですが、喜多方も夜通し吹雪いていました。夜半の暴風で細い柱が悲鳴を上げると、正直怖いと感じます。母の寝室は最も新しい増築部分(といっても軽く15年は過ぎていますが)で柱も多いから、家が倒壊しても多分大丈夫ですが、私の居室はもっとも弱い部分の上にありますから、もしもの時は絶対ダメです。

朝は6時頃から母と空模様を睨んでいました。目的地までのルートは、『強風の通り道になる急峻な山道』『風を遮るものは何一つない桧原湖畔』『磐梯山北麓』という、日露戦争前夜でも行きたくない白い地獄。風も雪も弱まる気配はありまぜん。しかも拙宅の車はセダン。私のRVでも持ってきてあれば何とかなったかも知れませんが・・・。

母としては法事に行ってほしかったようですが、ここで命を賭けてしまっては、計画中のアンプを完成させられないし(?!)、とにかく危険過ぎるという理由で、欠席することを先方に伝えました(後刻、四分の一の客が来られなかったと聞きました)。

強風で吹き飛ばされたらしく、新たな積雪はせいぜい30センチ程度ですが、もはや雪かきをする気力もなく、やはり雪のせいで、異様に猫密度が高くなった居間で、静かな日曜を過ごした次第です。

明日の夜、甲府に帰ります。

当面の心配事

今回の帰省の主因について、当分の間、警戒レベルを「重大な懸念」から「日常的な心配」に引き下げ、25日に甲府に戻ります。御気遣い頂きました各位には、こころより御礼申し上げます。もっとも結果的に、今月、行われる予定だった治療が検査のためちょうど1ヶ月遅れ、来月改めて気を揉むことになりますが。

明日、母の代理で、裏磐梯まで法事に出かけます。場所は「裏磐梯」と呼ばれる磐梯山より北の地域の中で、実家のある喜多方から一番遠いところで、いま、外は猛烈な吹雪です。法事といっても、本体の仏事には列席しません。仏事の会場がある集落に続く道は2本。そのうち1本は年明けから閉鎖され、残る1本の、幅員が狭くセンターラインを引くことができない葛折りの山道は、大量の積雪で、そこを越えていくことが文字どおり命がけの状態なのです。

この天候が続くと、明日の裏磐梯行は、間違いなく今年最大のアドヴェンチャーになります。つい先日体験した、高速道路上のホワイトアウトを越えることは確実です。

無事に戻れたら、様子をリポートします。
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