『気骨の判決』

前任校在職中は、三田の生協で新刊書を買い漁るのが楽しみだった。だが現任校では書籍の入手ルートもかなり充実し、重い荷物に更に本を積み上げることは減ったのだが、それでもふと気になる本が目に止まれば、もう買わずにはいられない。



この夏のご奉公週間に手にした中の一冊。昭和17年の「翼賛選挙」を無効と断じた判決があった、という話は物の本で読んだ記憶があるが、その経緯は全く知らなかった。本書は、この事件を担当した大審院判事吉田久の小伝。文章は至って平易で、いたずらに正義を喧伝することもなく、事実がスッと頭に流れ込んでくる。

本件判決原本は、言渡直後の東京大空襲で焼失した、とされていたが、つい最近、最高裁が保管する未整理文書の中から発見されたという。筆者が本書を書く契機となった出来事だが、恥ずかしながら私は、この裁判書発見というニュースを知らなかった。前任校最後の年で日々是神経戦だったから、世の文化的な出来事にまで注意が回らなかったということか。この判決は勿論だが、未整理の文書類にものすごく惹かれる。

現行法、日本近現代史に興味のある方は、早めに一読をお薦めする。
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