『海ゆかばのすべて』

先日の合宿で靖国神社に参拝した折、遊就館で『海ゆかばのすべて』というCDを買った。何も楽器店以外でディスクを求める必要もないのだが、品揃えの良い大きなショップに行く機会が減ったため、ある意味「特殊」なディスクは、こういうところの方が入手し安い。

以前にもここで『君が代のすべて』を購入したことがあり、今年6月にリリースされたばかりの『海ゆかば』を見つけたときは、ほんの一瞬の躊躇もなく購入した。

購入の理由は、戦中に多用され、その後はなかば封印された格好になった信時潔の「海ゆかば」よりむしろ、東儀季芳作曲の海軍儀制曲「海ゆかば」(こちらは「軍艦マーチ」のトリオとしてのみ、今日耳にする)に関する知識を増やしたいと思ったからだが、開封してみると、信時作が大半で、東儀作については、かなり貴重な音源が使われ、谷村政次郎氏の丁寧な解説が見られる程度で、ややがっかりした。だか、再生してみると、この感想が間違いであることにすぐに気づかされた。信時の「海ゆかば」は、あまりにもすばらしいのだ。

自衛官だった父が買い求めた軍歌のLPで、信時の「海ゆかば」を聴く機会はいくらでもあった。自分で購入したディスクにも、新旧の録音が含まれており、よく知っている曲である。その歌詞も、聖武天皇の宣命(『続日本紀宣命』所収)に見えることくらいは知っていた。

ところが改めてディスクに収められた新旧いくつもの「海ゆかば」を聴いてみると、鳥肌が立つほど美しいと感じたのだ。日常、和声法の教科書を見ても理解できないような不思議な和音が溢れる巷に暮らすうちに、忘れかけていた「基本」の美しさに出会った、そんな気分だった。

続きを読む>>
calendar
<< 長月 2005 >>
SunMonTueWedThuFriSat
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
selected entries
categories
archives
recent comments
recent trackbacks
profile
others