秋葉へ

週末だからといって、余裕をぶっこいていられるはずはないのだが、このところ短時間で決着を着ける(いや、本当は計画的に時間をかければいいのだけれど)作業が多く、健康の問題とあいまっていささかストレスが嵩んだ。疲れているのに眠りが浅く、早朝に目覚めると二度寝が出来ず悶々と・・・。

そこで来週頭に仕上げる予定の用事を総て金曜までにやっつけ、楽しみにしていた「キット屋」さんの東京試聴会にでかけた。過日、刈谷の本社ショールームで視聴させていただき、こちらのキットに一層惚れ込んだのだが、その折に聴くことができなかったアンプ、SPなども登場するということで、勇んで先着順の申し込みを送った。

午前中9時台の特急で東京に出て、ちょっと街を流してから会場に行く予定で動きだした。ところが道中でメールがあり、東北地方の地震を知った。携帯では十分な情報が入らず、新宿のホームで会津に電話する。着信規制もなく通話でき、母の無事を確認。発災と同時に猫たちが飛び出して戻らないとのことで、やはり耐震補強が必要かと、またしても暗澹たる気分。つい先日、屋外の散水、除雪用の井戸を掘り直した(=費用を負担した)ばかりなのに(ToT)。

試聴会の会場は言うまでもなく秋葉。電気街からちょっとだけ神田方向の貸しホールだが、街の雰囲気が微妙にぎこちない。人ごみの向うに献花台のテントが見える。メイド服のお嬢ちゃんが、大声でAED設置のための募金を呼び掛けている。時間まで、街の変貌とはあまり関係ない駅前の小店を覗くと、闇市を思わせる狭い通路の両側に並んだ店先には1コ数十円のパーツ類が整然と並び、むしろ落ち着きすら感じられるから不思議だ。ただ、トランス専門店のおじさんが、値上げが目前に迫っていること、材料高騰で商品の入荷が遅れに遅れていることなど、通り過ぎるだけでは分からない実情を話してくれる。

視聴会場に向かうと、犯行現場が遠望される。重力場が乱れたように(って経験はないけど)重苦しさが波紋になって広がっている。昌平橋を渡ってすぐに会場が見え、汗をかくまでもなく冷房の効いた室内へ。丁度、私が申し込んだ午後の一回目の受付が始まったようだが、会場には既に熱心なファンが大勢いて、思い思いに機器類を眺めている。店主の大橋氏に挨拶し、前の方に座を占めて、開始を待つ。

試聴会は、キット屋さんの代表的パワーアンプを2群に分け、間にスピーカークラフトのウィンズさんのデモを挟む三部構成。私の大好きな送信管中心に多極管とOTLで構成されたB群と、(恐らく)世界一人気の高い真空管300Bを使ったキット屋さんの代表的アンプ群、プラスソ連の6C33というA群。個人的にはB群が面白いが、A群の魅力も捨てがたい。ウィンズさんは必然的にSP主体になるが、私も使っているWE標準箱の本来のサイズ(8インチ用。私のは4インチ用)の鳴りっぷりに感激し、更に小さな箱を鳴らす技術の高さと、低音を補強する小さなトーンコントロールプリの性能に脱帽。ただ、次にキット屋さんで購入するアンプキットは、今回は登場せず、年内に生産中止が決まっている送信管プッシュプルモノラルアンプのペア。この線だだけは動かせない。

各アンプ、SPとソースの組み合わせはそれこそ無数にあり、自分の耳の心地よい組み合わせもあれば、多少疑問の残るセットもあった。だが、何かが悪いというのではなく、飽くまで好みの問題。もっとも極端な場合、真空管という増幅素子を交換するだけで、音は全く別物になる。ハイテク技術の粋を集め、クリーンルームで全自動で作られるLSIとは違った動作になるのも当然だろう。

楽しい90分はあっという間で、改めて電気街のパーツショップや真空管専門店で、現在製作、設計、企画、妄想中などのアンプに使うパーツ類を揃える。有名な専門店で買った良質なパーツが、後で寄った小店で6掛けで売られていてショック。もっとも今回は、高額でも5,000円を越えないトランスと、それこれ数十円の抵抗類が主眼だから、かさばってもあまり懐には響かない。

が、小店から路地に出ると、険悪な空気が。十数人の警官が青年一人を取り囲み、当該青年が甲高い声で悪態をついている。買い物をしたばかりの店の店員氏によると、ドライバーを持って歩いているところを咎められたとか。ここは秋葉だから、奇抜さだけの気味の悪い格好より、工具を持って歩く方がよほど自然だと思うのだが。もちろん、ドライバも振り回したら兇器になる。時節を考え、剥き身で持ち歩くのは止めたまえ。

たんとパーツを買ったから、これから校務がひとつ片付くたびに、一工程か二工程くらい、空いた時間の応じて製作を進めよう。

さてさてオーディオ機器を作る

医師の指導に従い服薬を継続している。通院の端緒となった極めて不快な症状は雲散霧消し、かえって薬が効きすぎたかのような気分すら味わう日々。でも、頭の廻りが芳しくないことへの言い訳はしっかりゲットした ( ̄ー ̄)ニヤリ

いつもお世話になっている隣の研究室の先生から、面白そうな判例をいただいた。薬の影響を脱して頭が廻ったら、エントリを立てるか。

音の良いプリアンプを作ろう(その2)

考えるまでもなく無謀なプランだ。およそ1年の間にキットを数点、人手を借りずに完成させたことがあるとはいえ、回路図に書かれたパーツの意味が総て分かる訳もなく、部品の定数を決める知識などある筈もない。本を読んで勉強するのは本業だから苦にならないが、付け焼き刃ではすぐにボロが出る。なにより、失敗しても誰にも頼ることができないという不安は大きい。

逆に、だからこそ作ってみたいという野望も止まない。少しずつ道具を買い揃え、細かい手仕事の末に何かを作り上げるという、どこから見ても地味な作業の見本を見せてくれたのは、父だった。黙々と何かを作っている父を見て育った私には、ものを作ることは当然過ぎることかもしれない。「エレクトロニクス少年」が長じて「真空管おやじ」へと、時代を遡っただけなのだ。

今回の単段増幅コントロールアンプは、キット屋さんの現行商品の中で、恐らく一二を争う部品の少なさだと思う。各パーツの意味はどうにか理解した。通販で、様々なパーツが届くと、次第に興奮が高まってくる。信号系は完全に公表された回路図のまま組み上げるが、電源回路は使う真空管が異なり、そのための特注トランスを用いることを前提に、若干の手直しが必要になる。幸い、電源回路シミュレータというソフトを手に入れたので、計算をせずに抵抗やコンデンサの値を絞り込める。こうして考えた回路に必要な部品が次々と届く。

が、ここで、アルミと鉄のシャーシに丸や四角、サイズも色々な穴を開けるという工程が待っている。父に習っておけばよかったと思っても、後の祭。(何故か)以前から持っていた電気ドリルを主として使うが、これでは10mmを越える穴は開けられない。そこで、近所のホームセンターでステップドリルを一つ買った。だがこれでも直径20mmより大きな穴は無理。適切な道具を使わなければ、不満足な結果にすら到達できない恐れが大きい。悩んでいると、ネットで10,000円未満で販売されている油圧パンチを見つけた。もし、ショップにシャーシの穴あけ加工を依頼すると、1回5,000円から10,000円かかる。二つシャーシの加工をすれば元が取れるではないか。国産の1/10程度の価格だから、より難しい角穴の加工などはできないが、やはり専用の工具は魅力だ。

ほどなく重たい油圧パンチが届き、加工技術の低さを前提に、かなり大きめのシャーシも注文した。フリーのCADソフトで、実寸の配置図を考えたりしながら、数日間連続で自宅に引き籠っていられるチャンスを待つことにした。また回路図は暗記してしまった。我ながら、なんで「道楽」となるとこんなに勤勉なのだろう・・・。「道楽」だからか・・・・・。

さてオーディオ機器を作る

勤務先は水曜日が会議日。まだまだ新参者で難しい仕事は回ってこない(といいな!!)とはいえ、今日も二つの会議に出て、かなり疲れている。今週の体調不良はどうも本物のようで、たびかさなる長距離移動やらなにやら、かなり過負荷状態だったのだろうか。

手元には本と、CDと、真空管を始めとするパーツ類が増え続けている。前二者は金沢時代から減ったことなどないが、パーツ類の劇的な増加が、これまでできなかった「趣味」への渇仰を表している、と思うのは私だけだろうか・・・。

体調が戻らないと、次のアンプを組み上げる気力が出ないし、そもそも締め切るのある仕事がいくつか目の前を行ったり来たりしているから、やはり仕事を先に片付けるのが順当か。つまらんな。

音の良いプリアンプを作ろう(その1)

年明けに、ネットでTANNOYの(私の感覚では)かなり大きなSPを買った。このメーカーの現行同軸2WAYを近所のハイエンドオーディオショップで聴いた時は、「なめとんのか?」という音だったが、熱烈なファンは多いし、鳴らす「コツ」めいた話も小耳に挟んで、このメーカーの、しかもやや古めのSPをどうしても所有したくなった。ただ、設置場所の関係で、おのずから「大きさ」には限度がある(このメーカーのは大きいんだな、とにかく)。で、あれこれ思案していたところ、私の現在の環境でも「置く」だけならなんとかなりそうなタイプが見つかった。

音は、凄い。送信管アンプの圧倒的な情報量に怯む気配もなく、豊かに延びのある中音、下っ腹に響くような低音、そして送信管アンプの持ち味である透明で輝かしい高音を、これまで聴いたことのない純度で聞かせてくれる。この機器類で存分に音楽を聴きたいから、人里は慣れた山奥にでも引き籠ろうか、と本気で思う。

TANNOYのフロア型がかなりの床面を占拠するため、従来のSPの置き場所に腐心することになるが、TANNOYの上にウッドコーンとアルテック404を置いてみたところ、TANNOYがホーン代わりになるのか、小さなSPの低音がいきなり充実し、ますます良い音の競演を繰り広げてくれる。

足るを知ることは恐らくないだろう超俗物である私は、このTANNOYと副次的効果に気を良くして、次なるシステム向上策に着手することに決めた。以前、ロシア球屋のFさんから買ったWE328A互換球を使い、トランス出力プリアンプを作る。そう決めた。始めて作ったオーディオアンプはケンクラフトのプリだった。始めて作った真空管アンプも、エレキットのプリだ。やはり(何故か)プリを作りたい。

モデルはキット屋さんの定番プリSV-310。Western Electric の五極管をチャンネルあたり1本ずつ使った、非常にシンプルな回路だ。部品点数が少なく、ほぼど素人の私でも全体を見通すことができ、デッドコピーしようか、という気にもなる。328は310のヒーター電圧違い球で、定格の上では同じ動作をする。キモになるのは出力トランスだが、ネットで同じものを売っているのを見つけ、迷わずゲット。同じショップでチョークコイルも買い、気がつくと大物パーツで足りないのは電源トランスだけになっていた。キット屋さんが使っているのは特注らしい。ならば、と、おとなり長野のトランスメーカー、フェニックスに、欲しい電圧、電流、整流方式などを書いて見積りを依頼してみた。

するとほどなく返信があり、納期2週間で、予想外に安価にできるという。一も二もなく正式発注し、納品まで、全体を収めるシャーシ、抵抗やコンデンサ、プラグなど小物パーツを、主としてネット通販で物色することにした。キットではなく図面からアンプを作るのは生まれて初めてで、試行錯誤、紆余曲折は覚悟の上だ。というか、パソコンもそうだったが、技術を実地で身につける以外に上達の方法がないから、高価なパーツを駄目にしない範囲で失敗も可、という気持ちで取り組むことにした。

ところが10日ほどで特注のトランスが届いてしまった。早すぎる。必要なパーツはまだ揃わない。が、もたもたするのもイヤだ。講義と校務のピークを越える1月末から2月頭にかけて、一気に決行する方針を固め、秋葉その他のショップに通販を依頼した。

またしてオーディオ機器を作る

・ガートナーが面白い意見を唱えているようだ。確かに、OSが何であるかは大きな問題ではなくなりつつある。かつて自社ネットを立ち上げ、「世界中のユーザーが加入し、結果インターネットは不要になる」とほざいたどこぞのソフト会社が、ネット検索の大手を買収しようとするだけで、十分に皮肉だ。

憧れの送信管アンプ(その7)

アンプのパーツを入手するためにネットオークションを利用するようになった。秋葉原でさえ、古いデバイスを扱う店が減り続けている現状では、「商品」と成り得るものを持っている個人から購入するというチャンネルは貴重かもしれない。オークションの仕組みで、土壇場で価格が上がったり、惜しいところで買い逃したり、まぁいろいろあるが、新年早々大きめのスピーカを入手し、SV-2の圧倒的な情報量を音圧に換えることが出来るようになった。機械を置いたリビングは、リスニング向けの間取りではないためセッティングが悩ましいが、とにかく以前とは比較にならない音が出て来ることは事実で、小型の真空管システムを用意した書斎は、「暖房がもったいない」という心にもない理由で使われなくなり、リビングにノートパソコンを持ち出して、音楽を浴びながら仕事をするのが習慣になった。

ネットを泳いでいると色々な情報が手に入るが、SV-2のNFB(負帰還という歪み打ち消し、周波数特性改善技術)レベルを可変にするという改造を試みた方が何人かいらっしゃるようで、その中のお一人の方法を真似してみようと思い立った。測定器を持たない素人がやみくもに手を出すと、せいぜい発信して慌てて電源を落すのが関の山、という難しい改造だが、同じ回路で実験した結果がアップされているから、かなり安心して挑戦できる。
チョークコイルの間にある放熱穴からリード線を引き出し、帰還抵抗を露出させる。
抵抗は端子板で接続し、抵抗を取り替えては音を出し、帰還の掛り具合を確かめる。数種類用意しておいた抵抗の中から、現在のシステムで好ましい音質を聴かせてくれたものを選び、標準仕様のもの、そして帰還をOFFにする設定の三種類をスイッチで切り替えることにする。パーツ箱から6Pセンターオフのトグルスイッチを引っ張り出し、ネジの径を計り、SV-2の初段管の間に穴を開ける。金属クズが残らないよう神経を使いながらも簡単に穴があき、抵抗とリード線をハンダ付けしたスイッチをネジ止めすると、あっさりと完成。


音量が上がり、高音の輝きが増すが、場合によったら音が荒く感じられるかもしれない無帰還は、女性ボーカルやピアノソロに向いている。帰還量を増やした設定では、音量が下がった見返りにゾクッとするほどつややかな音を聴かせてくれる。こちらは大音量のオーケストラなどに向いているようだ。

30年の憧れだった送信管アンプ、改造用のパーツもまだストックしてあるが、これにて一応の完成ということにしよう。

自作の機械は、自作というだけで良い音が出るような気がするが、それを確かめるには別の機械と音の聴き比べをするしかない。幸い、非常に良い石のアンプを持っているから、これと聴き比べをすれば、確かにすばらしい音質のアンプが出来たと断言できる。だが、パワーアンプにCD(とDAコンバータ)とスピーカを繋いで音を聴くのはいいが、以前のKT88を鳴らしたり、真空管バッファ付きCDPを鳴らそうと思うと非常に面倒くさい。キャスター付きのラックを引っ張り出し、裏に回ってケーブルを差し替えるのは、決してスマートではないし、線を引っかけでもしたら一大事だ。こうなると、何系統かの入力セレクターと、やはり何系統かの出力を持ち、どんなソースもパワーアンプにピッタリの信号にして送りだすプリアンプが欲しい。

ということで次回からプリアンプ編・・・・。

なおかつオーディオ機器を作る

・高速を使って1時間ちょっとで、母の病院に着く。先週末、およそ記憶にないくらい長々しいオペが終わったが、長かった分回復は遅いだろう。こちらに居られるのもあと数日。母が自分の具合よりも心配する猫の世話が気がかり。

・寒暖にかかわらず、気が向くと「話しかけてくる」猫どもとの日々も捨てがたい。ただ、一人でローカルな宗教的(土俗的?)行事をこなすのは、正直言って無理。例年は見るチャンスのない「彼岸獅子」を見れたから、これまたよしとする。

憧れの送信管アンプ(その6)

SV-2(2003)に付いている真空管は中国製。西側先進国で選別した特性の優れたものだというが、私の知る範囲では、これらよりも良いとされる球は無数にある。ただ、球を換える前に、現在の球をある程度こなれた状態にしなければならないだろう。必要程度のエージングが進み、球本来の音が出て、それが満足できないときに交換というチョイスが現実化する。そうじゃないと、最悪、音ではなくブランドを基準に大枚をはたくことにもなりかねない。

ただ、SV-2に使われている3種類の真空管のうち、初段とドライブ段の球は、付属品よりも良いと確信するものを既に持っている。キット屋さんから買っておいた松下製の12AX7、そして前任校のY先生に頂戴したKT88だ。およそ100時間の慣らし運転が終わった頃合を見て、まず12AX7を換えてみた。未使用品だから改めてエージングが必要だが、換えた直後から顕著な音の変化に驚く。あきらかに輪郭が鮮明になり、定位性が高まった。カメラのピントがスッと合うときのような感じで、音の「細部」まで明確に聞こえる。

これまでKT88を搭載し、当家の「メインアンプ」として活躍した初号機と並べてみる。TU-879Sはコストパフォーマンスも完成度も高い、非常に優れたアンプキットといえる。はんだ付けができて、真空管アンプを自作したい向きには、迷わずこれに挑戦することをお勧めする。だが、SV-2はふた桁くらい違う。十分に良い音を聞かせてくれるKT88の後に845というどでかい送信管が待ち構えているわけで、出で来る音の「密度」が圧倒的に違う。情報量が多いのだ。これまで聞こえなかった小さな音、気配まで再生される。けっして大音量で鳴らすわけではないが、非常に多くの情報が増幅されて出てくるのだ。あたかも、非常に精度の高いレンズ越しに美しい音を見ているような感じ、といえばいいだろうか。何気なく聴き流すことができない、ついつい引き込まれてしまう音なのだ。たっぷりとした厚み、幅をもった中低音はとてもシングルとは思えない。伸びやかな高音は、これが送信管の音、とでも言うべきもの。音はもちろん、姿もいい。トリタンフィラメントは、この光り方がまたいい。

数日後、ドライブ段のKT88をGoldLionに換えてみたが、こちらは変化を感じない。中国製が優秀なのか音質に与える影響が少ない部分なのか、わからないが、せっかくだからイギリス製を使うことする。
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重ね重ねオーディオ機器を作る

・『無辜の不処罰』は近代刑事訴訟の鉄則。時に下っ端がこれを忘れて大問題を起こすが、法相が「知ってんの?」と思われるようでは問題外。

・可処分所得が増えず、税は上がり、燃料も小麦も暴騰するとなると、今年は春が来るのか本気で不安になる。このご時勢でも「景気は拡大し続けている」などと空念仏を唱えるだけなら、上から見ると『円』に見えるという皮肉な建物の主なんか、国会の同意人事にしなくてもいい。

・臨時の帰省も早や10日。二月にこんなに長く会津にいるのは、おそらく修士2年のころ、当時の猫が重い病気になり看病に呼び戻されて以来。数日前までは多分雪だった、軒下に積もる氷の塊を掻き出すのに、つるはしを振るう。箸と六法より重いものは持たない主義なのに・・・。

憧れの送信管アンプ(その5)

憧れのアンプに取り組み、興奮で眠れないかと思ったが、疲れのほうが予想以上で、翌日はゆっくりと起床。今回の作業場に設定したリビングに移動すると、テーブルの上はもちろん、カーペットの上もいろいろなものが飛び散り、文字通りの惨状を呈している。BGMを流し、コーヒーを淹れ、新聞を開いて見出しを追うがほとんど頭に入らない。目の前には、作りかけの大型アンプが仰向けに置かれているのだから、このアンプ以外のことを考えろというほうが無理。マニュアルを開き今日の作業の手順を確認する。

脳みそと筋肉が動き出すのを待ちきれず、はんだごてに火を入れ、楽しさと不安とを半々に抱えながら、最初の手順にかかる。天板を下にして組み込んでいくわけで、アース、ヒーター、整流回路からB電源、信号系と、組み付けた大型部品の端子、ラグをワイヤーでつないでいく。イメージとしては、基盤のパターンをワイヤーで作っていく感じ。だが、ひとつのラグの穴にいくつも部品やワイヤーが入る箇所もあり、後に来るパーツを考えながら、場合によっては爪楊枝で穴を確保しながら半田を盛っていく。面倒な作業が続くが、実に楽しい。

ワイヤーによる配線が終わった時点で、いったん作業を止めて間違い探し。すべての配線を回路図と実体図と照合する。ミスは見つからず、CR類のはんだ付けに進む。手順では電源系から組んでいく。倍電圧整流のためのダイオードは、内蔵するブロックコンデンサの端子とラグで取り付ける。かなりの電流が流れ発熱が予想される大型のホーロー抵抗をつなぎ、チョークコイルとコンデンサ、ブリーダ抵抗などをはんだ付けしていく。1000Vを安定して供給する電源部は大き目の部品が多く、必然的に高密度実装となる。技術も経験もない身には大変に難しい。レイアウト上は電源部に近いシャーシ奥に、4本のセメント抵抗を付ける。出力管の845、または211のバイアスを決める重要な抵抗だが、これも非常に熱を出す。また、二種類の真空管を挿し換える時には、ここの抵抗をスイッチで切り替えてバイアスを変える。
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重ねてオーディオ機器を作る

・会津は(全国的に?)、立春から10日ほどが一番寒い。今日は寒の続きの中休み、といった感じでぬるい一日だったが、明日朝はまた氷点下10度に迫る勢いで冷え込むらしい。あまりの寒さで外に出られない猫たちは必然的に一番暖かい居間に集まってしまい、猫密度が高すぎると無用な小競り合いが起こるか、思いもかけないところで駆けっこが始まったりする。次にまた、母を乗せて遠方の病院に出かけるまで数日間は、この調子で過ごすととになる。

・実家には2セットのPCとネット環境、アナログ主体のオーディオ環境があるから、本さえ持ち込めば勉強するには困らない。父が使っていた金属用を中心とする多量の工具もあるから、もうちょっとの細工でアンプ製作環境も整えられるかも。


憧れの送信管アンプ(その4)

12月7日、校務のために出校し、早く帰るつもりが結局一日仕事になった。そして帰宅後、簡単な夕食を済ますと、待ちに待ったSV-2に着手した。まずは興奮を抑えて梱包を開く。一度出したら二度と戻せないと思えるくらい、見事に詰められた部品の数々。どうせ戻すことはないから、遠慮なく取り出させてもらおう。

一番上にある頑丈な箱は、標準仕様の直熱三極管845。これまで触ったこともない大きな真空管だ

。このセットでは、片チャンネルに3本の真空管を使う。初段に高μ双三極管12AX7、ドライブ段には人気の高いビーム出力管KT88。そして出力段に845を使う。大きさの比較に一枚。組み立ての間、バックで音楽を再生するTU-879S with KT88は、12AX7とKT88で構成されているから、普段使いのアンプの後ろに巨大な845を乗せることになる。

回路図は、暗記するくらい読み込んだ。信号系はシンプルな三段増幅で、部分帰還とオールオーバー帰還がかかるが、部品点数は決して多くない。だが、プレートに1000Vをかける845を安定的に動作させるため、電源部は手が込んでおり、部品も多い。次から次へと出てくる、きれいに袋詰めされた部品を見ていると、完成させられるかどうか、正直、不安になってくる。

事前に頂戴していたマニュアルを熟読していたから、すべての手順は頭に入っていたが、改めて添付のマニュアルを読み直し、合理的に構成された手順をひとつずつ辿っていく。手配線アンプの組み立て手順は、シャーシにねじ止めする部品の組み付け、配線、部品のはんだ付け、と進むが、ねじ止めの前に線材を付けておかないと、こてが届かなくなる箇所がある。SV-2の場合、シャーシはフレームと天板、底板に別れ、フレームにスイッチ類、VR、ソケット、ヒューズなどが付く。前面のスイッチ、VRは、取り付け前に所定の長さのテフロン線やシールド船をはんだ付けしておかないと、先に進めない。背面側にはソケットのほか、845の直流点火用に大きなブリッジダイオードが2つ付く。細かいはんだ付け箇所は、丁寧にテスターでチェックしながら進む。

天板に真空管ソケット、ブロックコンデンサ、そして非常に重たいトランス類(チョーク×2、出力×2、電源1)を固定し、裏には部品の中継ポストとして使うラグ版、コンデンサ、ハムバランサなど、マニュアルと照合しながら所定の位置に取り付け、フレームに固定する。

作業開始から数時間がたち、大分疲れを感じ始めた。日付も変わるころ、初日の作業の最後に、抵抗をすべて測定し、大きさごとに発泡スチロールに刺しておくことにした。こうしておけば、はんだ付けの際、効率よく進む。ところが、計測が終わるころ、小さなトラブルに気が付いた。ドライブ段、KT88のバイアス抵抗に使う2kΩが1本しかないのだ。ステレオだから当然、2本必要なのだが、どこを探しても出てこない。すべての抵抗を計測し、1kΩが1本残った。どうやらキット屋さんの手違いのようだ。自分のパーツ箱を探してみるが、200Ωや20kΩはあるが、2kΩはなぜか持っていない。甲府にはパーツショップはないし、翌朝、秋葉原に出向くのも効率が悪すぎる。キット屋さんに連絡すれば、最速で送ってくれるだろうが、一日作業ができなければ、週末に完成させることができなくなる。集中力が切れないうちに、一気に完成させないと、失敗するような気がしてならない。

結局、パーツ箱にあった1kΩと間違って入っていた1kΩを直列につなぎ、熱収縮チューブで包んで他の部品と接触しないような細工を施し、2kΩの抵抗を用意した。

ここまで進めたところで、目が悲鳴を上げ始めた。初日の作業はここまでにし、一眠りすることにしよう。疲れていても興奮は続いているから、寝付けるかどうかはわからないが。

なおなおオーディオ機器を作る

・一日がかりの検査行から一夜明け、母親はそれなりの日常生活に。
二人で「農薬餃子」が出てしまったスーパーに行くと、母の顔を見て店長が飛び出してくる。見舞いの言葉に続いて、店の苦しい現状を聞く。『町の名前に泥を塗った』とまで言われているとか。今回の騒動、末端の小売店に責任はない。弱い立場の、絶対に反論できない相手を罵るためだけに電話をかけてくる、絵に書いたようにさもしい奴こそ、町の名前に泥を塗っていると知れ。

そして、文化的、制度的、社会的に「安全」を保障し得ない国から、リスク満載の商品を輸入してボロ儲けしている商社は、問答無用で国賊だ。鈴木商店の故事を学ぶがいい。

食料自給率4割未満の恐ろしさを、そろそろ全国民で共有したほうがいい。水も安全も、もはやタダではない。

・G7財務相会談。予想(予定?)通り無策を満天下に示して閉会。月曜日の失望売りはどれくらいの下落幅に?。


憧れの送信管アンプ(その3)

TU-879Sを作って、真空管アンプの面白さのとりこになり、「作ってみたいアンプ」にあれこれ思いをめぐらすようになった。より深く「作る」ため、知識がほしくなり、

情熱の真空管アンプ

情熱の真空管アンプ

日本実業出版社

例えばこの本を熟読した。本を読んで勉強するのは、長年の経験があるからなんとかなる。ただ、知識を実践するのは容易ではないから、その知識が身についたかどうか自信が持てない。まぁ、法制史の勉強と比べれば、実践の可能性があるだけアンプの方が楽だが・・。

キット屋さんの商品で、211の挿し換えができるキットは、SV-2(2003)という。このショップのフラグシップモデルで、UV845という211と同型の大型真空管を前提に設計されている。プリント基板を用いないオール手配線の「漢の増幅器」だ。すでに2007バージョンがリリースされているが、こちらは挿し換えが出来ず、プリント基板を用い、しかも、かなりの部分が組立て済みで提供される。回路構成などには魅力を感じるが、作りたいとは思わない。手配線ができれば基盤を使ったキットは絶対に作れる。しかし逆は真ではない。私は、手配線の技量を高めて、「真空管アンプ作りが『得意』」といえるくらいになりたいと思った。MT管2本の小さな二号機を完成させたくらいの技量では、どう考えてもSV-2はハードルが高すぎる。
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なおオーディオ機器を作る

  • 新たに農薬餃子が見つかった喜多方市のスーパーは、実家の近くで母親が年中利用している。まさか冷凍餃子なんか喰わないとは思うが、明日朝また電話してみるか。
  • 今年もまた「サラ川」の季節がやってきた。ちょっと長く続きすぎで、ややマンネリの香りもするが、こちらの二番煎じほどあざとくもないし、薄味のペーソスもまぁいいか。来年は自分も投稿してみようかと思ったり思わなかったり。


  • 憧れの送信管アンプ(その2)

    小学校の終わりから中学校にかけて愛読した雑誌『初歩のラジオ』。製作記事をまねようとしても、例えば2SB56なんて型番のゲルマニウムトランジスタ1石で発振器を作ったりするのが関の山で、それも部品が揃わず、高音で「りーん」となるはずが、低音で「ぐもももも~」と訳のわからない音が出たりする。当時喜多方には一軒だけパーツを扱う店があったが、雑誌で見る秋葉価格の3倍から5倍の値段で、ほんの僅かな種類があるだけだった。だから通販という便利な方法を知らない子供には、絶対にパーツを揃えることはできなかった。それでも、電子工作は面白く、見たことも聞いたこともない真空管や、パワートランジスタを並べた『HiFIオーディオアンプ』の製作記事は、おとぎ話のように楽しかった。

    その頃、父にねだって買ってもらった「電子ブロック」という、お勉強になるおもちゃがあった。実家の改築の際、処分されてしまったが、先年復刻版が出た。当然のように購入し、いまも突然、ラジオになって天気予報を流したりしている。

    閑話休題。

    『初ラ』に載った真空管アンプの製作記事は、毎号欠かさず、意味も分からないくせに繰り返し読みふけった。子供には手も足も出ないハイレベルな世界だったからこそ、強く惹かれていた。「シングル」や「プッシュプル」(ともに増幅形式)くらいはようやくわかる程度の子供の目に、宝物のように写ったのが「UV211」(UVはピンの形式。211が型番)という真空管だった。荒い白黒の印刷で見る写真からも、その威容が伝わってくる。多くの製作記事で使われる一般的な真空管の、およそ倍ほどの大きさ。プレート(内部の電極の一つ)には、なんと1000Vもかけるというモンスター真空管。本来は、放送局などの送信機用に開発された大型真空管で、オーディオに転用してみたところ、予想外にも良い音質が得られた。しかも需要は決して多くないから、大きな球は安価で流通した(今は需要は消滅寸前だが、価格は天を衝く勢い)。211を使った製作記事は、何ヶ月かおきに必ず現れ、「危険な高圧電流」と「輝くような音質」という決まり文句が躍った。

    いまから思うと、『初ラ』で読んだ記事の中で、真空管の型番を覚えているのはKT88と211だけだ。KT88はオーディオ球として非常に人気があり、作例も多かったのだろう。その他多くの真空管、たとえば6V6などは、命名の規則を知らないから番号を覚えきれず、結局印象に残らなかった。ところが211という数字だけのこの真空管は忘れられなかった。それほどインパクトの強いこの211で、いつかアンプを作りたい。そう思って、思っていたことすら忘れるくらいの長い時が流れた。

    KT88のアンプを手にした時、憧れが現実になるかもしれない、という思いが沸き上がった。だが、回路図もなく、211が手に入るのかどうかすら分からず、知識も技術も経験も、何一つない、ただ漠然とした憧れだけが強くなっていく、そんな日々が続いた去年の夏、キット屋という真空管アンプキットの最大手のサイトを見ていて、30種に及ぶラインナップのなかで一種類だけ、『211挿し換え可能』という設計がなされていることを知った。憧れが始めて形を持った瞬間だった。

    も一つオーディオ機器を作る

    『農薬餃子』のニュースを見るたび、自慢の手作り餃子を作らなくなって久しい、と感慨に浸っている。メタミドホスとは何物だ?。パラ○○○なら会津の実家にも一瓶転がっていたが・・・(←おいっ!)

    木曜から、しばらく、その会津に戻る予定。あまり楽しくない帰省になる。

    憧れの送信管アンプ(その1)

    ネットでアンプのパーツを購入するようになった。これまでネット通販といえば、本かCD、DVD、PCのソフトくらいだったが、オークションを覗いてみると、なかなか楽しいパーツも売りに出ている。

    リビングの主要増幅器として頑張るTU-879S with KT88の初段に使う、12AX7という真空管がある。秋葉で国産の中古を買って、キットについてきた現行のロシア球と交換してみたところ、音の厚みが増したような感じだが、高音域が荒れることがある。状態の良くない球だったか。で、代わりの球を探していたら、ネットで旧東ドイツ製の同等管を入手できた。しかも1,000円未満で。早速差し替え、しばらく鳴らしてみると、高域の荒れもなく、中低音の厚みが出てきた。理想的だ。この球を扱っている方とメールでやり取りしているうちに、大変に高性能な旧ソ連製真空管を譲ってもらえることになった。

    オーディオアンプに使う真空管は数々ある。私が使っているKT88はビーム管(傍熱管)といい、大出力が狙える高性能管だ。二号機に使っているのは6BM8という、本来はテレビ用の傍熱複合管。小さな管からは想像できない豊かな音が出る。こうした球が出てくる以前からオーディオの世界で重用された真空管が、2A3と300Bという直熱三極管だ。前者はRCA、後者はWesternElectricが開発し、電蓄から高級アンプにまで幅広く使われた。両者とも、開発元は真空管製造から手を引いてしまい(西側先進国の電機メーカーは、もうどこも真空管を作っていない)、現在はロシア、中国で同一規格の製品が作られているが、わずかに市場に出まわる本家の製品とは似て非なるものらしい。それに本家の未使用品になると、投機の対象になっているのか、本家WE300Bが中国製の20倍以上という、異様な価格で取引されることも。とても手が出ない。

    ロシア製でもいいから、2A3か300Bのシングルアンプを手配線で作ってみたい、と考えるようになった。プリント基板ではない、手配線というやり方は、かなり古典的で、基板が使えるならその方が絶対に完成度が高い。だが、回路の知識が乏しい文系の私には、プリント基板は何枚作っても、何も分からない。所定の位置に部品をハンダ付けすることは楽しいが、「いま付けた抵抗の働きは」と問われたら、多分分からない。手配線だと、どの部品がどの部品と繋がるか、回路図を見ながら作業することになり(キットなら有り難い実体配線図もあるが)、何台か作れば、自然と回路の中身が見えてくる。それに手配線だと、いかにも骨太な「漢の増幅器」って感じがして好ましい。

    キット屋さんで、2A3も300Bも、手配線のキットを出しているから、どちらかを作って手配線のスキルを高めよう、そう考えていたとき、上述の高性能真空管の話を伺った。球は6B4Gといい、2A3のフィラメント電圧(2.5V)を真空管としては標準的な6.3Vにした互換球だ。ソケットのタイプ(2A3は4ピン、6B4Gは8ピン)とフィラメント電圧を変えることができれば、差し替えて使える、ということ。

    ロシア球屋のFさんの扱う真空管は、高性能で低価格という、このご時世に夢みたいな商品ばかり。6B4Gと前段に使う候補球二種類、そして整流管をまとめて購入した。アメ球の数分の一程度の価格だった。Fさんによると旧ソ連では、アメリカ製と同規格、というよりむしろ上位互換製品を競って作っていたという。ケネディとフルシチョフのロケット開発競争と同じ軸線上にある話だ。しかも民生向けではなく(ソ連に民生なんて言葉はないか)軍用に作られた、極めて丈夫で性能のいい製品が、国家体制が変わって随分たった今ごろになっても、流れ出してくるらしいのだ。6B4Gに続いて、WE328A互換球、WE311A互換球も入ってくるということで、これも予約した。300Bの前段や、独立したプリアンプを作ったら楽しいに違いない。

    ところが、だ。ネットで6B4Gシングル用の適当な回路図もみつけ、パーツを集めにかかろうか、というところで、おなじみのキット屋さんの商品に関して、嬉しくない話を聞き込んだ。店主の大橋氏には、購入した商品について何度かメールで教えていただいたこともあり、早速、単刀直入に疑問点をぶつけてみた。

    大橋氏はすぐに返事を下さった。話は本当だった。キット屋さんのラインナップで私が一番作りたいと思っている商品が、早晩製造中止になる、というのだ。自分の今の技量では、その完全手配線のキットを作ることは難しい。だから手配線のスキルを上げるため、当初はキット、次に6B4Gで自作、という方針を立てた。ところが、スキルを上げた先の目標が消えてしまう。諦めるのか、それとも無謀な挑戦をするのか。迷う時間はあまり残されていなかった。
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