2006.06.07 水曜日 13:31
棄民
痛ましい判決が出た。
Source
痛ましく、残念ながら予想通りの判決だった。
判決は、問題の移民政策を国策だったとした上で、
しかし、除斥期間の壁を破ることができなかった。
当然、原告弁護団は控訴するという。控訴審で原審を覆すためには、原告らが提訴したときから遡って20年前の時点まで、実質的に損害賠償請求権を行使しえなかったことを立証する必要がある。しかし、これは難しいと思われる。
今朝見たテレビで、原告の一人は「祖国を訴えること」への抵抗感を語っていた。切なすぎる。国は、潔く非を認め、控訴審の弁論など待つことなく、可及的速やかに被害者を救済して、この紛争を主体的に解決すべきである。それが、自分たちを棄てた無慈悲な国を、まだ「祖国」と呼んでくれる人々にできる、唯一の償いである。
Source
痛ましく、残念ながら予想通りの判決だった。
判決は、問題の移民政策を国策だったとした上で、
入植地の農業適性や面積、所有権の有無などについて「現地調査や情報提供をする義務を尽くさなかった」と、国家賠償法上の賠償責任を認めた。この認定は非常に重要である。
しかし、除斥期間の壁を破ることができなかった。
第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)最近の公害病訴訟では、不法行為が継続していた、という論法で除斥期間の始期を引き寄せて、被害者の救済を進める傾向が見られる。が、今回の訴訟では、国と「日本海外協会連合会」(現JICA)が原告たちをドミニカに送り出した(更に厳密にいえば原告が移民することを決意し、「日本海外協会連合会」との契約を締結した)時点で、事前の調査や説明義務を怠ったという不法行為は終了している。最も遅い時点でも、原告たちが現地に到着し、当初の説明とは異なる環境しか与えられないと知った段階で、不法行為は完結したといえよう。正に「棄民」そのものである。原告らが棄てられた時に不法行為は完結してしまった。50年も前のことである。
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
当然、原告弁護団は控訴するという。控訴審で原審を覆すためには、原告らが提訴したときから遡って20年前の時点まで、実質的に損害賠償請求権を行使しえなかったことを立証する必要がある。しかし、これは難しいと思われる。
今朝見たテレビで、原告の一人は「祖国を訴えること」への抵抗感を語っていた。切なすぎる。国は、潔く非を認め、控訴審の弁論など待つことなく、可及的速やかに被害者を救済して、この紛争を主体的に解決すべきである。それが、自分たちを棄てた無慈悲な国を、まだ「祖国」と呼んでくれる人々にできる、唯一の償いである。
comments