まだ最高裁があった

既に各所で大きく報道されている痴漢上告無罪事件。判決がwebで読めるようになっていた。

自分が男だから同性の肩を持つわけではないし、現実に廉恥を欠く輩が存在すると思うと腹が煮えるような不快感を覚えるが、喧伝されるところの、痴漢発生から逮捕、そして有罪あるいは示談に至るプロセスは、およそ近代刑事司法が標榜する「無辜の不処罰」というスローガンを忘れ去った、魔女裁判並みに低劣なものに見える。今回の最高裁の判断が、この下劣低劣な猿芝居に一石を投じたことは間違いない。

那須弘平判事の補足意見を引用しよう。
冤罪が真摯に争われている場合については,たとえ被害者女性の供述が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で,弁護人の反対尋問を経てもなお「不自然・不合理な点がない」かのように見えるときであっても,供述を補強する証拠ないし間接事実の存否に特別な注意を払う必要がある。その上で,補強する証拠等が存在しないにもかかわらず裁判官が有罪の判断に踏み切るについては,「合理的な疑いを超えた証明」の視点から問題がないかどうか,格別に厳しい点検を欠かせない。

下級審裁判官に対する強烈な戒めである。そして捜査に当たる警察官、公判を担う検察官にも、より慎重な捜査、証拠収集が求められる。無辜が冤罪に泣くということは、罪を免れてほくそ笑む変質者が存在するのだ。こいつが一番悪いのは、論を俟たない。


週末は博多にいます。初の九州上陸です。太宰府で梅ヶ枝餅を食べるのだ(^_^)

パブリックってぇのはなぁ!

ボ2ネタ町村教授のブログ経由で、こんなたわけたことが行われているそうな。

e-Gov(「電子政府の総合窓口」)に掲出されたパブリックコメント募集の公示。一覧ページでは93件もの募集が並んでいるが、その中にきわめて異様な募集がある。
中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(最終まとめ)案」の骨子に関する意見募集の実施について
とやらで、中身はこんな感じ。

何が異様かって、公示日と締切り日がすごい。4月11日公示で4月15日が締切りになっている。内容はというと、一太郎のファイルが二つ、リンクされている。どれどれ、面倒だがコンバートして見てみるか。で、書いてあるのは、これまで五月雨式に報道されたLSの問題点と、いくつかのLSを「潰す」という不動の決意が見え隠れする「改善方策」類であって、これを読んで、即座に意見をまとめられる者だけ、意見を言わせてやろう、という文科省のありがたい思し召しらしい。

現下のLSには問題が山積している、と思う。制度設計が甘く、しかも動き出したらすぐぶれた。当初は、まるで司法試験が易しくなるような誤解を与えた。旧司法試験合格者の平均年齢から考えても、2年や3年で合格水準に達するのは至難だ。しかもLSの2年や3年の間には、旧試合格後の修習を先取りする内容まで。ならばやはり、試験を易しくしなければ合格は無理だろう。そうしたら、合格者の質が低いと文句を言い出す始末だ。二回試験に合格しても、弁護士の就職難が深刻化しているし、新試験と二回試験の不合格者はもっと悲惨だろう。個々のLSの努力だけで対応できるレベルだと思うのか?。

そして文科の所行の極めつけは、このパブリックコメント募集だ。行政手続法に従ったものではないそうだから、30日の期間をおく必要はないようだが、だからといって、ざっと見ても頭が痛くなりそうな深刻な問題に、5日で意見をまとめろと要求するのか。おおかた、今月中に発表される予定の報告は既に出来上がりつつあり、「形だけでも意見を求めたことにしておこう」という程度の話だろう、と、勘繰りたくもなる。

パブリックという形容詞は、コメントだけでなく、サーヴァントにも付くのだが。

珠洲に何が起こったか

またひと月近く放置してしまいました。金沢の卒業式から戻って現任校で卒業生を送り出し、研究室に大型の書架2台を受け入れ、整理も途中で里帰り。彼岸の諸行事に当たりました。

日常的に行き来する親戚と、親戚に準じる付き合いをする家が10軒弱あり、そのうち彼岸のお参りが必要な家が5軒前後あります。お中日には、これらの家の惣領が一斉に相互訪問をするので、妙な「たすぎがけ」が起こったりします。その家の仏壇に線香を焚くという儀式が、円滑な交際を維持する必要条件ですから、喜多方市の、主として北部に散らばる家々を目指してひたすらドライブします。

春まだ浅い会津の山里を訪うて

  山嗤い 人泣き 空の黄色かな

生まれて初めて、猛烈な鼻炎に襲われました。親戚中で一番山の奥にある家には、別件もあって2度行きましたから、思いっきり山に嗤われた気分です。

甲府に戻ると、慌ただしく日程をこなすうちに新学期が始まりました。静かだった春休みが恋しい気もしますが、やはり学生がいて初めて大学といえるでしょう。


昨日あたりから、「アナログ先行停波」の話題を聞くようになりまして、今日、総務省のHPで公式発表を見ました。地デジ完全移行を前に、
事前に小規模なエリアで実際にアナログ放送を終了することにより、アナログ放送終了に当たって生じ得る課題の抽出を行い、2011年の全国一斉終了の際の対策検討に役立てる
ことを目的に停波のリハーサルをするというのです。

世界同時不況で、アメリカでは完全移行を延期することが決まりましたし、対応テレビやチューナーの普及が伸びない我が国でも、延期になるのではないかと思っていたのですが、総務省は当初の計画通りの停波を強行したいようです。停波強行でテレビの需要を作り出し、業界に貢献するつもりなのでしょう。

不景気という『イメージ』を実態の悪化につなげるのは、消費の冷え込みですから、無理矢理にも需要を作るのも意味なしとはしませんが、対象がテレビでは、コストが高すぎるような気がします。ホームセンターで10000円未満で買えるアナログテレビではなく、数万円の国産テレビを買わなければなりません。B-CASという謎の集金団体が極めて不当な制限を実施したため、対応機器を自由に作ることが出来ず、安価な輸入品に頼ることが出来ないのです。選挙が終われば補助金などという話も立ち消えるでしょうから、買い時を量るのも大変です。

そして何より、テレビを楽しみにしている高齢者や子供たちには、停波、移行が分かり難すぎるからくりだということが、どうにもいただけません。

実験場の募集に手を挙げた自治体がいくつかあったといいますが、見返りは何なのか、非常に気になります。能登半島の突端に位置し美しい海に恵まれた珠洲は、その綺麗な名前とは裏腹に、原発を争点とする選挙で市を二分する対立が起こり、明治時代の内務省も泣いて身を引きそうなでたらめなが行われたところです。そして原発誘致に決ったものの、電力会社が計画を撤回してしまい、以来、経済の停滞が著しいと聞いています。何の目算があって、停波の実験に手を挙げたのでしょうか。

私がよく知っている珠洲出身者を思い浮かべてみました。その人物なら、自治体によるあらゆる広報努力にもかかわらず、テレビが映らなくなって初めて、近所の電気屋に電話しそうな気がします。そんなのどかな田舎町で、何が起こったのか、これから起こるのか、注目してみましょう。
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