しっとりオーディオ機器を作る

嘘。今回は作ってない。

ということで
番外編 TL51X を買った


愛用のCDプレーヤー"SANSUI CD-α717DR"を買ったのは、まだバブルの余韻が残る頃。大学院生ながらバブリーなお仕事で纏まったお宝を頂戴し、現在でも私のリファレンス機であるアンプ、スピーカと一緒に購入した。このプレーヤー、最先端の1bitDACを搭載し、高い剛性のシャーシと相まって、鮮やかな色彩感と光沢を放ちながらも決してギラつかない音を聴かせてくれた。その後、湿気との長い戦いを生き抜き、トレイに動力を伝えるベルトは何度交換したか知れない。最近では、バンコードという特殊ゴムを買ってきて、「専用輪ゴム」まで自作していた。

だが本来、回る物の耐用年数は決して長くない。20年に垂んとする長い時を経て、このプレーヤーも本来の性能を発揮することができなくなってきた。手(ピックアップを制御するモーター類)が震え、目(光学ピックアップ)がかすみ、正しくデータを読み取れない場面が、目に見えて増えたのだ。サブのプレーヤー1台、DVDなどマルチディスクプレーヤー3台、パソコン用のドライブに至っては無数に転がっているこの部屋だが、このリファレンス機に匹敵する音を出す機械は持っていない。いよいよ新しい機械を買うしかなさそうだ。

そうは思っても、忙しさにかまけ、かつ完成品を買う事への微妙な感情もあって一日延ばしにしていたのだが、数日前のこと、刈谷のキット屋さんのHPで、あるプレーヤーが製造中止になるというニュースに接した。漠然と「買うならこれ」と決めていた"CEC TL51X"だ。

DACはキット屋さんから購入し組み立てた "Model2" を愛用しているが、このDACとの相性が良いと評判であり、刈谷の試聴室でも、東京の試聴会でも何度となく聴いた「あの音」なら、新たな常用プレーヤーとして必要十分だ。SACDも普及は見込めそうもないし、ここで単体のトランスポート(DACを持たず、ディスクからデジタル信号を取り出す)を買うのもエレクトロニクスおやじらしくていい。そのトランスポートがキット屋さんに10台程度、メーカー在庫も同数くらいで、既に製造を中止したらしい。怒る元気も失せる。

キット屋さんでは受注を止め、日時を決めて一斉に注文を受けるという。キット屋さんのこの方法でまともに買えたことはない。何故か販売開始の時刻、用事があってパソコンに向かえないのだ。では、どこか在庫を持っているところはないだろうか、と、とりあえずググってみたところ、アマゾン経由で地方のショップが「在庫あり」の表示を出している。アマゾンなら支払いも簡単だし、割引率はキット屋さんと同じ。送料無料ならいうことない。瞬間に購入を決意し、幾つかのボタンを押して注文を確定させた。これが、4月23日金曜日午前8時のこと。恐らく注文が駆け巡っているだろうから、果たして買えるかどうか。

アマゾンのオートコンファメーションはすぐに届いたが、販売するショップから連絡が来たのはその日の午後6時半。メールに曰く
当店のシステムの都合により、午前9時以降のご注文につきましては
翌営業日のご注文確認後のご案内となります。
キレそうになった。国内で1時間も時差があるって、どこだ、一体!

週が明け、26日月曜日の午前中、件のショップから
ご注文頂きました商品ですが、ご注文が殺到しており当店在庫切れとなってしまいました。誠に申し訳御座いません。
現在、商品確保の為メーカーと交渉中で御座います。
と行って寄越した。買えなかったら、このメーカーの他機種(価格は三割り増しくらい(;_:))にするか…。ところが5時間後、受注確認のメールが入った。といっても発送に関する記述が曖昧で、確実に購入できるのかどうか判然としない。そこで、配送を連休明けにして欲しい旨、メールを送ってみた。すると翌日、着日指定で手配したとの返信が届いた。どうやら頑張ってメーカーと交渉してくれたようだ。ちなみにキット屋さんでは瞬時に売り切れたらしい。

その後も若干気を揉んだが、今朝、無事にブツが届いた。アマゾンに注文し、地方のショップが受注、メーカーに直送を手配した。メーカーは他県の物流センターから送り出し、指定日まで一晩、甲府のクロネコで留め置かれて届けられたのは、この機体。
本体の上にある黒い物体は、CDの上に載せるスタビライザ。ボタンを押すとトレイが出てきたりディスクを吐き出したりするのではなく、手で上部のフタを押して開ける。

非常に"アナログ"な作りだ。だが、トップローディングということは、筐体の上方に十分な空間がないとディスクの出し入れに困る。だが私が使う(作る)真空管アンプは、基本的に上部に真空管を露出させる(変な趣味じゃなくって放熱のためだからねっ!)から、最上部に51Xを置くことができない。困った挙げ句に辿り着いたのは、元のプレーヤーと入れ替え、棚板を若干上げて手が入るようにするという、あまり美的ではない解決策。


TL51Xは世界的にも珍しいベルトドライブ方式を採用している。ダイレクトドライブでは避けることのできない駆動による振動をキャンセルし、外周と内周で異なる回転数を正確に、シームレスに変化させる。低トルクモーターと、300gのスタビライザによる慣性モーメントを利用しているとあるが、力学は今ひとつ理解しにくいな(^^ゞ

午前中に届き、すぐにラックまわりの掃除と配線し直し、同時に現在のメインアンプ(ブログ未搭載)の電源スイッチ調整を済ませ、急いで音を出したわけだが、鮮明な音、奥だけでなく手前、リスナーに向かって音像が広がるような感覚。リジットな駆動部分のおかげでエラーのないデータ読み取りが行われ、真空管バッファ付きDAコンバータの威力が遺憾なく発揮されている。鮮度の高い音、とでも表現しておこうか。これまでも十分に満足できる音だったが、更に一皮むけた、一ランク上の生き生きした音場が出現した。ここの楽器がくっきり聞こえるだけでなく、オケの、アンサンブルの広さ、奥行きまでよりはっきりと見えるようになった。

このトランスポートなら、DACを換えることで更に変化を楽しめるだろう。デジタル臭さはそもそもないが、最近気に入っているトランスを使っても間違いなく楽しめる。バラック組みで止まっているトランス出力プリアンプ、送信管アンプ、真空管バッファ付きチューナーと並行してDAC第三号を検討するかな…
バキッ!!☆/(x_x)

どっこいオーディオ機器を作る

冬と春が覇権を競っているような天気のせいか、三女が喉を腫らしてしまった。ひどく咳き込むのを心配した母が動物病院に連れて行き、例によって親切丁寧な治療の効果はてきめんで、苦しそうに咳き込むこともなくなった。冷酷無比な請求書は目をつぶって丸呑みするしかない。


番外編 「エイフル」に行ってきた

彼岸の親戚廻りは早々と終えたので、昨夏から行きたいと思いつつ果たせなかったヴィンテージオーディオショップ「エイフル」を訪ねてみた。昨年、埼玉から会津、裏磐梯に移ってきたのだが、夏、秋は自由な時間がとれず、冬は豪雪地帯を走破する元気がなく、折から南風が流れ込んで20℃近くまで気温が上がった今日、エイヤっと出かけてみた。お目当ては、元日本オーディオ協会会長浅野勇氏設計のアンプ。

真空管は、発明からわずかに100年で消えてしまった「技術」だが、その100年の間には関連技術の大きな進歩があった。浅野氏が活躍された頃と現在とでもっとも違うところは、ダイオードとコンデンサではないかと思う。整流と平滑に使うこれら部品が大きく進歩するのは、浅野氏の時代の少し後。後の時代の優れた部品を使えば、必ずより良い音が出るのか、前時代の回路構成は後のものに劣るのかという厄介な問について、浅野アンプの音を聴くことで何かヒントを得られるかもしれない。

エイフルの場所は、地図で見る限り私の「遊び場」の中だから、実家から30分ほどで到着。あらかじめ電話で希望を伝えておいたので、着くとすぐに、浅野アンプの音を聴かせてもらえることになった。このアンプ、最近売られている完成品、キットいずれにもほとんど採用されない「当時」の技術、技法で構成されており、無音時にはハムノイズが聞こえる。もっとも、つながっているスピーカーも時代物で大変に効率がよい(100dbを越えているはず)ものだから、私が持っているどのアンプ(除くトランジスタ)でも必ずハムが聞こえるだろう。で、音が鳴り始めたら、ハムは全く気にならなくなり、すぐに楽音に集中してしまう、というか、引き込まれてしまう。ものすごい迫力と音の艶に圧倒されること頻り。

ところが浅野アンプの後に出てきたWestern Electric 59Bを聴いて、はたと困った。浅野アンプのパーツ一式を購入しようかと思って行ったのだが、59Bの音は(もちろん値段も)比較にならないほどすばらしいのだ。深みというか気品というか、戦前のアメリカの工業技術がこれほど凄まじいとは、正直、肌に粟の立つ思いだった。

ショップ兼展示室の内部はまだ整理が終わっていないようで、機器類やユニットが所狭しと置かれているが、ひとつ上のフロアに上がると、「ヴィンテージオーディオ博物館」の雰囲気。いきなりVictrolaの美音を聴かせてもらった。この奥には、ものの本やネットでしか見たことのなかった「骨董」がずらりと並び、階下での困惑などとりあえずどこかに置いて、次々と動作する名機に見とれ、聴き惚れる。例えばWestern の7Aというアンプ。聞くところに寄ると1922年製造で、チラッと写っている10Dというスピーカーをつなぐ。出てくるのは、惚れ惚れするような典雅な音。ちなみに製造当時の電源は「電池」。ちなみにこの7Aは、希望すれば買えるらしい。貯金しようかな…。

建物の3階に案内してもらい、かつての「遊び場」の風景を眺める。檜原湖は、一日くらい暖かくなっても冬のままだ。

今日の試聴はここまで。浅野アンプの件はペンディングということで日を改めて訪問し、再度、いろいろと聴かせてもらうことにした。そのときには秘蔵のSP盤を持ち込もう。

技術の進歩と音質の関係について、今の時点で言えること。

確かに最新技術で作られた工業製品は優れているが、往事の技術で作られた製品でも、時々の最高の知識を集めたものはやはりすばらしい。そして往事のアンプと往事のスピーカーのように、技術者の想定した組み合わせを再現すると、時代を超えたカップリングより好ましい結果が出ることも珍しくない。

文字にすると当たり前だが、今日、エイフルでこのことを実感した。これからの機器設計に役立つ経験だった。

じわじわオーディオ機器を作る

ますます訳の分からないタイトルになった。團伊玖磨氏もこのあたりまで来るとネタがなくて困っていたのだろう。

2年遅れの製作記事もいい加減に次に進まないと、エントリにできる、つまり作っちゃった(^^ゞアンプが溜まりすぎて、順番すら分からなくなるおそれが・・・。

6B4Gシングルアンプを作る(その5)
素人である、初心者である、不慣れである、という本来言い訳になる言辞は、時として無鉄砲の代名詞に変わる。トランス出力プリを作ってから僅か1ヶ月ちょっとで、次のアンプを作るべく、CADソフトと格闘しているとは、自分でも呆れる。ただ、前作からあまりに時間が短く、前作を十分に分析、反省することなく「次」に手を付けたため、あちこち「無理」なパーツ配置をするハメになった。まぁ、経験値の貯まり方が遅いことを確認できたからそれでいいか(笑)。

こんな風に平面図を書いてみると、もう穴開けをしたくて仕方がない。この作業に関しては、しみじみ、親父が生きているうちに教わっておけば良かったと思う。昔、親父が物置で道具を使っていた記憶をたどりながら、おっかなびっくり進めるが、必ずといって良いほど穴の位置が合わない_| ̄|○。才能なさ過ぎ…。





穴開け完了からパーツ取り付けにかかって、電源電圧が予定通り出ずに苦労したが、抵抗を付けたり外したりの試行錯誤の末、どうにか狙った電圧で動作するところまで辿り着いた。

ガス入り整流管は怪しい光を放って、ついでに時々ノイズも出してくれる。だがこの光は実に色っぽい。続いて水銀整流管に替えると、また違った光り方で目にも楽しい。

この時点で音はまだこなれていないが、10センチフルレンジから透き通った女性ボーカルが響くと、このアンプの素性の良さを感じることができた。

ただ、この時の出力段のプレートにかかった電圧がやや高すぎて、出力管を1本、早々と昇天させることになろうとは、素人の初心者には知る由もなかった…(/_;)

さわやかオーディオ機器を作る

さっぱり意味が分からないタイトルになった。audioカテゴリの記事も久々だし、作製記事は11ヶ月ぶりだ。その間、作らなかったということはない。いや、むしろ相当に作った。でも記事にしなかったのは、今日のタイトルに引っかかっていたのかも知れない。『パイプのけむり』シリーズのタイトルを順番に使わせていただいたが、「さわやか」は、オーディオ機器もパイプのけむりにも無理筋な気がする。

では何故このエントリを起こしたか。そう、それは、疲れすぎて訳が分からなくなったのさ。

「さわやか」は本家の23作目で、27作まで続く。だが27は「さよなら」だから、当方では27作から後は特定の冠と番号を付けようと思う。「冠」のアイディアをお寄せいただければ幸い>各位


6B4Gシングルアンプを作る(その4)
ブログでは、6B4Gが完成していなかった。2周(2年)遅れは避けたいものだ。

整流管の直後にはケミコンではなくフイルムコンを使いたい(音が良いらしい)。だがケミコンと比べて容量の大きいものは少なく、あっても非常に高価だ。ネットをうろうろして、20μFという立派な代物を手に入れた。ただ、このままではシャーシに固定することすらできないので、エポキシでアルミケースに固定し、アルミをシャーシにねじ止めすることにした。
横の台所洗剤はドリル加工時の切削油の代用品(;^^)ヘ..
ひとつだけ未開封で保存してあるたばこの箱で大きさを比較。

穴開けなど電動工具を使う作業と並行して、バラック組みで動作試験。
ハムノイズがはっきり聞こえるが、画面左の、シンプルこの上ない信号系からはちゃんとした音が出ている。電源部を弄って、信号系各部の電圧を調節する。
このとき、片チャンネル分だけで電源の実験をしてしまったために、後に両チャンネルを組んだとき、電圧が出なくて苦労するハメに (;´д`)トホホ

降ってもオーディオ機器を作る

《番外編》第15回真空管オーディオ・フェアに行ってきた

今日は秋晴れ。昨日までのデスマーチを振り切るように早起きして、10時オープンを念頭に甲府、新宿、お茶の水と移動し、聖橋口から坂を下った。会場の損保会館は中央線の線路沿いだから、坂を下りきるとすぐ。と、2分も歩かないうちに、行列らしき人の群れが。外堀通りに面した損保会館の入口を先頭に、線路沿いの坂道までず〜っと行列が延びている。約100人はいるだろうか。

オープンまでまだ15分ほどある。最後尾に着くと「オーディオフェアの列ですか」と一度だけ尋ねられる。歩道の上に列はどんどん延びていく。私の左横の坂道、車道をインラインスケートを履いた少年から壮年までのグループがばらばらに駆け上がっていく。奇妙な感覚だ。僅か数センチの段差の向こうとはざっと50年の隔たりがある。駆け抜けていく青年達の会話が聞こえた。
「何の行列でしょう」
「前代未聞ですね」
君たちの記憶の前の話なんだよ。

今日の主目的は、次に作る予定のミニアンプと次の次の電熱アンプf(^^;)のパーツを買うことと、最近ご無沙汰しているキット屋さんのデモを聴くこと。特に今回注目していたのが各種スピーカーなのだが、特にこのAutograph MIDの音を聴きたいと思っていた。これまであれこれと購入してきたが、現在のラインナップでは、アンプよりもSPに魅力的な商品が多い。このMIDの他にも、職人技の冴えるオリジナルの箱が数々あり、聴き比べていると時間を忘れる。

別のフロアでは、先日トランスを購入したメーカーが、巨大な送信管のアンプを展示している。私の普段使いの送信管(211)をドライブ菅にしているの。このでかさに見合う電圧をかけると、正直怖い。

更に別のフロアに移動すると、先日発売がアナウンスされたばかりの「国産300B」が「展示」されていた。製造メーカーの方に色々と伺い、まだ音は聴けないものの一層期待がふくらむ。もしかしたら、作る予定が入れ替わるかも(。_゜☆\

最後に即売コーナーで、普段は値引きなんて期待できない(要するに需要の限られた)パーツ類を特価で購入。出品していないショップに寄るため秋葉に移動した。

それにしても、いま生きている真空管ファンの2割くらいが集まったんじゃないかと思うくらいの盛況ぶり。ただし、おっさん以上の世代が大半で、先細りは必死。というか、今日のイベント会場のおっさん率はざっと99.5%。残りの0.4%があんちゃんで、0.1%がご婦人。ご婦人と言っても客は非常に少数で、出展企業、ショップの関係者に限られる。

そこに並んでいる物、流れてくる音はすばらしいが、我と我が身を省みて客層だけは痛い。

甲府に戻って、キット屋の大橋氏に今日の感想、特に上記SPとあるアンプに関する短いインプレを送った。さぁ、明日からは・・・

またデスマーチだ(ToT)

晴れてもオーディオ機器を作る

私は、ありがたいことに頂き物が多い、と思う。何故かと考えていたら、「大げさなくらい喜ぶからじゃないか」という意見があった。貰い物はうれしいから、素直な感謝を伝えているつもりだし、そうしないのは礼を欠く。「何かのついで」や「行きがかり」で貰い物をしてもうれしいものはうれしい。ましてや、わざわざ用意したものを頂いたりしたら、そりゃ「大げさ」なくらいうれしいのは当然だと思う。他人様に何か差し上げる時も、自分が頂戴したら、と、頭のどこかで考えている。

物のやりとりを介さなくても、思い遣りと感謝は、人間関係の基本だ。なのに、絶対に役立つものをくれる、といっているのに感謝一つされない我が国の首相が哀れでならない。景気対策として、どうしようもなく時宜を失したことは疑いないが、やはり徳が低いことの報いというべきか。

12000円もらったら、ちょっと足して、トランスを買おう(笑)


6B4Gシングルアンプを作る(その3)

前回、Audioカテゴリーのエントリを起こしたのは去年の10月。その後、アンプ作りを断念したわけではない(実際作ってるし(^_^;ゞ)が、真っ黒なTodoリストを眺める日々に、「作って」「楽しんで」「エントリを起こす」ところまで行かなかった。だが、そろそろ1年の周回遅れとなり、次のアンプを楽しく作るためにも、止まっているエントリを再開する決心をした次第。

信号系の構想がまとまり、同時並行していた電源系も、ちょっと面白いアイディアが浮かんだ。328Aトランスプリに5U4Gという大振りな整流管を使った。その後、短い間に数種類の整流管を手にした。オクタルベースでそのまま差し替えができるものも、4PのUXタイプもあった。そんな中で、特に興味を引かれたのがCK1006と83という二種類だった。CK1006はガス入り整流管と呼ばれる光り物、83は水銀整流管だという。5U4Gとはちょっと違うらしい。

スペックシートによると、Ck1006はEf=1.7V または0Vで動作するとある。0Vの場合は70mA以上を流す必要があるが、6B4Gを2本鳴らすなら70mAくらい楽にクリアする。83は、後年ゲッタタイプが作られたが、当初は水銀が封入され、フィラメントの熱で水銀が気化し、その状態で熱電子が飛ぶらしい。これにはプリヒートが必須だから、スタンバイスイッチかタイマー回路を組み込むことになる。83のEfは普通の5Vだが、1006はどうするか。ベースはともにUXだ。

普段使いの5U4G、ハレの(←おいっ!)83とCK1006を差し替えできるようにするためには、8Pと4Pの二種類のソケットを付け、フィラメントは5Vをon-offできるようにする。主電源とは別に、B電圧を単独で切れるようにし、結果的にA電源のみ働く状態でプリヒートが可能だ。結果、次のような電源回路第一案を得た。


整流管は当然、一本だけ使う。83とCK1006の使い分けはフィラメントの5Vで切り替える。整流管の直後にくるコンデンサは大きなフイルムコンで、チョークの後に大容量の電解コン。300V以上のB1と、250V程度のB2を取り出し、SRPPだから100V弱のヒーターバイアス電圧も用意する。

抵抗がほぼ空白になっているのは、実際のところカットアンドトライで決めたからで、他意はない。また6B4Gの直流点火回路、6SL7のヒーターへの回路は省略。

ここまで考えがまとまったところで部品を発注。数日で全部そろった。レイアウトはこんな感じに

暮れてもオーディオ機器を作る

もう恐慌寸前という市況を眺めると、歴史系研究者の常というか、1920年代の知識を引っ張り出してはため息を。このままでは小遣いが減ってアンプ作り計画に齟齬が・・・バキッ!!☆/(x_x)

昭和の金融恐慌は、時の大蔵大臣の「失言」が引き金になりました。財政、金融当局は、どんなに非難されてもオプティミストのふりをする必要があるかもしれません。些細な気配の悪化が、とんでもない事態を呼んでしまいますから。せめて歴史に学びましょう。


6B4Gシングルアンプを作る(その2)

回路を考える、といっても、ずぶの素人の悲しさ、ネットや本を眺めては、自分でも作れそうな難易度かどうかを基準に、使ってみたい「部分」を集めることに終始した。並行して、秋葉をはじめ、各地のパーツショップをネットで巡回しつつ、良さそうなパーツを物色する。選択基準はやはり価格。在庫があって待たずに手に入れられることも重要だ。ここで長期間待たされては、気合いが空回りしてしまう。

さて、回路だが、とりあえず信号系と電源系を分けて考えてみることにした。参考にしたのはネットで公開されている作例のほか、教科書兼参考書として、松並希活『直熱&傍熱管アンプ』森川忠勇『オーディオ真空管アンプ製作テクニック』をじっくり読み込んだ。森川氏の回路で紹介されているグリッドチョークを、氏のショップ「オーディオ専科」で購入することにした。また、松並氏の本からは、ヒーターバイアスの理屈やプレート損失の考え方など、大事な基礎を勉強した。両書とも、カラー写真付の作例が非常に参考になる。

電源部は、π型平滑回路でリップルを取るという方針が決まった。そこでまず、PSU Designer IIというフリーソフトで、フィルタの効き具合と電圧降下のバランスをみることにする。現実に組み立ててみないと所定の電圧が取れるかどうかわからないが、リップルの具合はグラフで見ることができてありがたい。

信号系は、本での勉強に続いて、Spiceで電圧や抵抗を弄ってはシミュレート結果を比較してみる。そしてグリッドチョーク結合の第二案を得た(ちなみに第一案はふつ〜のCR結合だった)。

これをもとに電源を再検討し、パーツの発注へと進もう。
(回路図作成には、水魚堂さんの「回路図エディタBSch3V」を使わせていただきました。)

明けてもオーディオ機器を作る

熱波が去り、晴天の日中でも日差しが心地好く、パソコンラックに仕込んだ小型アンプの輻射熱も苦にならない、良い季節になりました(^―^) 。ところが、待ちに待った「自作の秋」を満喫するつもりが、なんやかやと仕事が追いかけてきて、思うに任せません。

先日、教科書の段取りなどの相談に、学内の○善に行った時のこと。書籍プロパー(と思しき)スタッフ女史と、時間的に厳しい販売スケジュールや献本など、いくつかの確認事項をサクサクと片付け、それじゃあ研究室に戻るか、と歩きかけたところで、陳列棚に珍しい雑誌があることに気づきました。季刊『管球王国』。今年の夏に出た本です。表紙が見えるように置かれていますが、誰か手に取った気配もありません。

件の女史に、「こんなもの、買う人いるの?」
その本をチラ見した女史「いませんよ〜、こんなぁ( ̄ー ̄)。時々入ってきちゃうんですよねぇww」
売れないものが入荷しちゃっていかにも迷惑って感じで答えた次の瞬間、そう問いかけたのが私だと気づいた女史「え、いやっ、その、先生のご趣味を考えて入れさせていただきまして・・・・、すいませ〜ん」

あまりにもベタな展開で暫し爆笑。「一冊貰ってくよ」
女史「ありがとうございます。ほんと、すいません。あせあせ」
にっこり笑って「三月ほど祟るね」
女史「せんせ〜(ToT)」


6B4Gシングルアンプを作る(その1)

春まだ浅い3月。初の自作となったトランスプリに気を良くして、次のターゲットに、ロシア球屋のFさん絶賛の6C4C(以後は元になったアメ球の「6B4G」に統一して表記)でシングルを作ることを決心した。6B4Gは、オーディオ球としていまだに人気の高い(ロシアや中国などでは生産が続いている)2A3のフィラメントを、使いやすい6.3Vに上げたもの。比較的遅い時期に製造された球が多く、高い真空度が保たれていて状態が良い等々、書籍、ネットの記事などから蘊蓄を吸収しまくる。

続いてお手本となる作例集め。2A3シングルの作例は非常に多く、6B4Gシングルもかなり作られているようだ。この球をシングルで使うと、出力はチャンネルあたり3W程度と、手持ちの半導体アンプの100W+100Wと比べると、見劣りするどころの騒ぎじゃないが、シンプルな二段増幅でも無理なく完成する。初段、整流管もFさんから買った6SL7、5U4Gと決めているから、他の球による作例はとりあえず外しても、随分沢山のお手本があって有り難い。

だが、第一作の328互換トランスプリのように、完成した回路をまるっきりコピーするのも面白くない。とはいえ、設計できるほどの知識は当然にない。ならば切り貼り、つぎはぎなら何とかなるのではないだろうか、と、作例の数々を眺めては、思いにふける。切った貼ったにも相応の知識が必要で、理屈が足りないところはSpiceでシミュレートを繰り返し、理論上動くことを確認する。

初段は6SL7のSRPP、誰でもできるCR結合だが、出力段のグリッド抵抗には「グリッドチョーク」を使ってみよう。バイアスは勿論自己バイアス。このあたりまで考えが纏まって、パーツの物色にかかる。今回もネット通販だけですべての部品を集めることにして、以前使ったショップ、初めてのショップなど、あちこち見て回る。すると予定外のパーツが見つかったりして、回路にも変更が出るが、こんな変更なら大歓迎。

作り始める前、というかお金を使い始める前の、この構想段階(妄想?にちょっと具体性の粉をかけた程度)が一番楽しいかもしれない。

よもすがらオーディオ機器を作る

「よもすがら」って、そんな体力どこに・・・。

暑くなって、ハンダゴテを握れない日々が続いています。始終アンプばかり作るわけにも行かず、この季節は、アンプは弄らずに音楽を聴くだけ、と思ったら、真空管の発熱は半端じゃなく、とにかく辛い毎日です。

そんな日常に潤いを、というわけで、前から欲しかった Wedgwood のAnnual Collection から Celebrating Historic Milestones の2006年版カップを買ってしまいました。。ソーサーには今とはちょっと違った図形が。1906年の三極管発明を記念したモデルです。普段は大事にしまっておいて、新作アンプの本格運用開始のときに出すことにしましょう。

音の良いプリアンプを作ろう(その4)

328互換7Ж12C(7J12S)トランスプリ(面倒だから、以下「328互換プリ」と称す)は、大変に良い音を聴かせてくれる。音の艶が格別で、音源直結とは全く違う。ハーワーアンプのVRを最大にして、プリのVRで音量をコントロールするのが常道らしいが、SV-2(2003)with UV211はゲイン十分なので、プリのVRは7時から8時くらいの位置でかなりの音量になってしまう。これよりも絞ると左右の偏差が出てしまうので、抵抗を噛ませる必要があるかもしれない。

その後、次のアンプ計画用のパーツを頼んだショップから良いケミコンが届いたので、カソードパスコンと電源部の平滑コンをブランドものに交換。音質の変化は、微妙かな。

このアンプの成功だけで、旧ソ連製の真空管が優秀であると断定するのは乱暴に過ぎる。だが、冷戦時代の米ソが「最先端」(!?)の電子技術を競い合っていたのは有名な話。

優秀さで定評のある(ということになっているが、実際に聴いたことはないr(^^)ポリポリ)WesternElectricの真空管と同じ規格で作っているのだから、当然のごとく優れていることが期待される。だがやはり、聴き比べてみないことには「優れている」とか「だめ」とか、音質云々言うのは無責任な話だ。

そこで、あちこち眺めているうちに、WE328AとWE310Aの未使用品を、前者は2本、後者は4本、購入することができた。328は、サクッと挿し替えて音を聴くことができる。で、その音は、・・・・旧ソ連の互換球と、少なくとも聴感上の違いは分からない。片や数十時間のエージングが終わった状態、片や箱から出したばかりの新品で、新品から十分よい音が出たということは、確かに328が優れていると言えそうだ。でも互換球が劣ることは決してない。これで互換球がボケてしまっても、安心して交換できる。

少し遅れて入手した310Aはヒーターが10Vのため、若干の調整が必要になる。半固定抵抗で調整できるようにしておいたが、トランスの出力がギリギリで、微妙に欲しい電圧まで上がらない。そのため短時間のテストとなった。で、出てきた音は、というと、文字に表すのは難しいが、明らかに違う。濃厚さに拍車がかかった、とでもいうのがふさわしいかもしれない。定電圧電源に使っているレギュレータを低ドロップ型に交換すれば、問題なく10V出るだろうから、後日の改造予定に入れておこう。

310はWesternの91型アンプの前球として使われた名球で、キット屋さんの91BやSV-310でかつて使われていた。どちらもほとんど市場に残っておらず、ロシア管を使わざるをえなくなったということだが、ロシア(旧ソ連)製でも凄い音がする。本物の310が4本もあるから、初段とドライブ段に310を使った豪気なアンプも考えられそうだ。

外にヒーター電圧の違いだけで挿し替えが可能な6C6も入手して使ってみたが、こちらは音が薄い。密度感が全然たらず、2本で1,000円の中古球は、当分ディスプレー用として部屋を飾ることにしよう。
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ひねもすオーディオ機器を作る

・私の健康状態について、ご心配いただき有り難うございます。当面の危険は完全になくなったものと考えていますが、薬が効いた状態に身体が慣れていないため、ぼんやりが続いています。追い追い個別にご報告します。

・下山判事の準抗告が棄却されていました。最高裁は、国会の裁判官訴追委員会に訴追を請求しました。久し振りに弾劾裁判が行われることになりそうです。このあたりの手続は、今後マスコミが詳細に説明してくれるでしょうから、講義する側としては非常に有り難い状況です。それにしても、弾劾裁判所のURL、力強くて大好きです。

音の良いプリアンプを作ろう(その3)

日頃の行いは決してよくないが、時折、ぽっかりと時間が空くことがある。料理、読書、写真などなど、どんな趣味に費やすか、はたまたひたすら寝て過ごすか。まぁほとんど実家との往復で消えてしまう纏まった自由時間だが、日程の関係で甲府にいなければならず、しかも喫緊の用向きは全部処理済、なんて僥倖も訪れることがある。

音の良いプリアンプ作戦は、1月末日から2月の頭にかけての週末、午後と土日を使って決行と相成った。暖房なしでも汗ばむくらい日差しの暖かな窓辺で、金属板に穴を開けるという初めての作業に挑んだ。CADを使い実寸で出力した配置図をシャーシに貼り、パンチで穴の位置を決め、細めのドリルで穴を開けていく。必要な大きさまで次第に太いチャックを使い、更にステップドリル、油圧パンチで予定したサイズまで穴を広げていく。のだが、何分初めてのことで、刃先が暴れ。穴が微妙に、時に明確にずれてしまう。穴を開け終わるまで数時間を要し、キズ数ヶ所と使えない穴数個も含めて、使用に耐えうるギリギリの線で止まった。もうちょっとミスったら構造部品の組み付けに齟齬が生じ、ケース一つをボツにするところだった。真っ直ぐに並ぶはずのトランス3つが何故か蛇行し(?!)、修行不足を思い知った。父が存命だったら、「下手くそ」と一言で評価を下し、アドバイスをくれただろうに。残念でならない。これで初日の作業はおしまい。目と肩が凝って、これ以上の継続は無理と判断した。
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