罪と罰の均衡

最高気温のニュースで「甲府」が現れるようになった。百葉箱の中で37度を越えるということは、普通に人が暮らす環境では、体感で40度を越えるということか。つい先日、気象台の発表が35度だった日の昼下がり、拙宅ベランダの日陰では38度を記録した・・・。

夏向きの真空管アンプ計画は、ほぼ予想通り来年まで繰り越し。作りかけが2台、計画中が2台、改修待ち1台を放置して、夏の休暇と巡業が目前に迫ってきた。実家用に1台、明日の午後くらいまでに取り掛かっている仕事が片付けば、やっつけ仕事で組み上げるのだが、最大の敵は暑さ。既に負けは確実か。


金曜日、改修中の甲府地裁には200人以上の傍聴希望者が集まったとか。現役判事のストーカー規制法違反事件初公判だ。公判の模様は各マスコミが総力を挙げて報道してくれたので、内容の確認は至って容易。ネットで探すと、産経が非常に力を入れて書いている

被告人の行動は批判されてしかるべきである。酌むべき情状の一片も見当たらない。愚かと言うも疎かである。だが、この日の法廷に違和感を覚えたのは、私だけではないのではなかろうか。

被害女性の処罰感情を軽視するものではないが、本件は、どう考えても略式で片付く程度の軽微な事件だ。正式裁判に持ち出すにしても、即決手続で処理可能な簡単な事件だ。まぁ、当初、被告人が構成要件に当たる「恋愛感情」を否定するなどという姑息な態度を取ったからかもしれないが、法廷は、同程度の事件としては最も長い手続きを行った。ここで裁かれているのは、ストーカーという迷惑千万な行為ではなく、判事という身分、元甲府地家裁都留支部長という役職が裁かれているような気がしてならない。

被告人の行動は言語道断だが、ストーカーは身分犯ではない。犯行によって裁判官に対する市民の信頼を損ねたとはいえ、最大限の見せしめ的「引き回し」には、疑問を抱かざるをえない。同人は、既に罷免を覚悟しているようだし、仮に罷免されなくても、被告人の入会を認める弁護士会があるとは思えないから、法律家として生きていくことはできない。前途は真っ暗、社会的制裁は十二分だと思う。

とはいえ、間違っても被告人に同情したり、行動を正当化しようと試みているのではない(事例が事例だけに、表現も慎重にしないと・・・)。だが、名もなき中年親父が歳の離れた女性に熱を上げ、関係が上手くいかないと見るや、見境もなくメールで嫌がらせをする、という行動が起きたとしよう。その時、そもそも警察は被疑者を逮捕するか。仮に逮捕されたとして、検察官は起訴するか。本件と同じように正式裁判で裁こうとするか。桶川の悲劇は極端にしても、今日、警察がどの程度ストーカー犯の捜査に動けるだろうか。メールと無言電話だけで。

下山判事は、如何に非難されても反論などできようはずがない。だが、有罪確定までの手続き全体を通じて、他の同種事例との均衡を失するほど重く扱われる必要もない。法定刑を引き上げるなどということはあり得ないが、手続きで存分に加重するのは、いかがなものか。

裁判員制度導入まで1年を切りながら国民の理解が進んでいるとはいえず、法曹の増員に対しては弁護士会が文句を言いだすような、そんな状況でなくても、同様に最大限重い手続きを採用したかどうか、疑問なのである。
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