オーディオ機器を作る

TU-879Sの箱を眺めている頃、甲府の、その手の趣味のある人(そういう意味ではないぞ>奥一同)には著名な電器店に、スピーカのキットを注文した。ウッドコーンという新技術と、それを用いたユニットを2Wayにしたキットが発売されるということを、なにかの雑誌で読んで非常に気になっていた。

随分人気がある商品らしく、しばらく待たされたが、梅雨のある日、とうとう入荷した。これはキットといっても至って簡単なもので、ネットワークのハンダ付けが少々面倒かな、という程度。事前にネットワークのアレンジに関する情報も仕入れていたから、先ずは組んで鳴らしてみることにした。最初の音出しでは「なんだこりゃ?」ってくらいくぐもった、訳のわからない音が出たが、見る間に霧が晴れるように音が透明になっていく。ユニット、ケーブル、そしてネットワーク素子が、単なる部品から音響機器に変化していくのだろう。1時間もすると(耳がバカになるせいもあるが)、非常に聴きやすい、ヌケのいい高音とサイズからは考えられない低音を出し始める。これまでメインだったNS-1classicsの音が物足りなく感じられるのだから、人間という奴は贅沢だ。

間もなくアキバでパーツを買い、ネットワークとアンプに簡単な改造を施す。
ネットワークの変更でスピーカは、低域のスピード感が上がり、高域も伸びが良くなったように感じられる。アンプは、カップリングコンデンサを評判の高級品に交換したのだが、低音の迫力が明らかに増した。この低音、好みの別れるところだろうが、私には非常に心地よい。

忙しくて目が回る夏の日も過ぎ、次は何を作ろうかと思案していたら、ネットで悲しいニュースを読んだ。アメリカのオーディオメーカー、アルテックランシングが、ハイエンドオーディオから撤退するという。パソコン用モニタやサラウンドセットなど、パッケージ化された商品に特化するらしい。研究室で使っている2.1chのSPはアルテックだ。確かにいい音がするが、オーディオ用とはいえない。

いつだったか、アキバのあるショップで、小さなバスレフ箱に10センチのフルレンジを入れて、思わず振り返ってしまうくらい生き生きした音を聴かせていた。引き込まれるように店に入り、能書きを読むと、404-8Aというアルテックのユニットを使っていた。10センチフルレンジだから買えない値段ではなかったが、なんとなく二の足を踏み、二、三度行ったり来たりした揚げ句、買わずに帰ってきた。あの音を聴くことが出来なくなる、と思ったら、居ても立ってもいられない。ネットで調べると、アルテックの発表から日が経っていないにもかかわらず、既に嘆きの声が上がっている。そして欠品になっているショップが続々と。コストパフォーマンスの高いユニットだけ手に入れて、箱は後から考えよう。逡巡している暇はなさそうだ。

数日後、あまり大きくない箱が届いた。

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