2008.12.02 火曜日 23:05
縁なき衆生
「言論の自由」とは有り難い。こんな駄文を書き散らす自由も、国家の行く末を左右する妄言を吐く自由も、等しく認められる、と思っている輩が多すぎはしないだろうか。地位、身分が高くなればあたかも累進課税のように、言葉に対する責任も重くなるはずなのに、この国では、首相からして言葉が軽い。
前空幕長の論文とやらも、圧倒的な不景気の前に、もう忘れられたかと思ったが、当のご本人が騒いでいた。今日の読売(甲府で宅配される)13版35面に、小さなベタ記事が載った。"ご高説"には納得できる点もないでもないが、問題の文章は全く考証不十分。だが問題は、なぜ彼が職を免ぜられたか、既に語られなくなってしまったことではなかろうか。
彼が階級章を返上し一民間人になった後なら、かつての古巣の仲間のため、国論を変えよと主張しても構わない。だが、国内で最強の実力を持つ集団の長が、政府と意見を異にすることを公言して恥じないというのは、論外だ。彼が恋い慕う旧軍においても、それは本来許されざる抗命のはずだったが、軍はやがて統帥権という化け物を操り、国を滅ぼした。「実力」と「政治」を分離しなければならないという、当然の原則に背いたことが罷免の理由だ。実力集団が自分たちの思想で政治を壟断した結果は、もはや語る必要すらなかろう。文民統制は近代国家の大原則として堅持されねばならない。
ところで今日の読売の同じ35面に、「山本五十六の直筆「遺書」や作戦書、堀元中将の孫宅から発見」という記事が載っていた。そのなかのこんな一文に目がとまった。
今日の35面には、なかなかに深いものがあった。
前空幕長の論文とやらも、圧倒的な不景気の前に、もう忘れられたかと思ったが、当のご本人が騒いでいた。今日の読売(甲府で宅配される)13版35面に、小さなベタ記事が載った。"ご高説"には納得できる点もないでもないが、問題の文章は全く考証不十分。だが問題は、なぜ彼が職を免ぜられたか、既に語られなくなってしまったことではなかろうか。
彼が階級章を返上し一民間人になった後なら、かつての古巣の仲間のため、国論を変えよと主張しても構わない。だが、国内で最強の実力を持つ集団の長が、政府と意見を異にすることを公言して恥じないというのは、論外だ。彼が恋い慕う旧軍においても、それは本来許されざる抗命のはずだったが、軍はやがて統帥権という化け物を操り、国を滅ぼした。「実力」と「政治」を分離しなければならないという、当然の原則に背いたことが罷免の理由だ。実力集団が自分たちの思想で政治を壟断した結果は、もはや語る必要すらなかろう。文民統制は近代国家の大原則として堅持されねばならない。
ところで今日の読売の同じ35面に、「山本五十六の直筆「遺書」や作戦書、堀元中将の孫宅から発見」という記事が載っていた。そのなかのこんな一文に目がとまった。
日独伊三国同盟締結前年の39年5月31日付の述志には、「此身滅すへし此志奪ふ可からす」(自分の身が滅びようとも自分の意志はだれも奪えない)などとつづり、三国同盟に反対の決意を表明している。山本は「名将」と讃えられる人物だが、名将だから、日本を泥沼に引き込んだ同盟への反対だから、といって、今日の文民統制原則に照らせば許されないことだ。
今日の35面には、なかなかに深いものがあった。
comments