ある一審判決

有明海の漁業被害で開門命令・佐賀地裁判決

正直、驚いた。莫大な税金を投入した国家プロジェクトは、どれほどの利権を生むのか知らないが、一度走り出したらブレーキの壊れた機関車のように、終点の車止めに体当たりするまで止まらない。あまりの破壊力に、線路脇にはぺんぺん草一本生えないのではないかとすら思う。

科学的な分析を理解する頭はないが、轟音をたてて水門が閉っていく場面をテレビで見て、背筋が寒くなった。これは間違いだと直感した。少なくとも、減反と外米輸入を強行しながら干拓地を作るという明らかな矛盾を、「始めちゃったから」という以上のまともな理由で説明できる者は一人もなく、そして豊壌の海は消えた。

消えた海が蘇ることがあるのかどうか、分からないが、「水門を開け」などという判決が出るとは思わなかった。まだ一審だし、総理の英断で公共事業の間違いを認めて控訴断念なんて、フジテレビ以外の局では流れないニュースだから、諌早の海はまだまだ楽観はできない。でも、この小さな裁判所の判決が蟻の一穴にならないとも限らない。

地裁レベルでは、なかなか考えさせられる判決が出る。これが高裁に上がると、住民訴訟砂漠、というイメージがあるが、やはり人事構成の問題だろうか。住民訴訟が原則住民敗訴という流れに落ち着くのは、石田和外が第5代最高裁長官に就任してからだといわれる。最高裁からリベラル色が消え、高裁が露骨に最高裁を見つめるようになって以降、国を相手取っての裁判は、最終的に非常に高い壁に遮られてきた。そしてごく近年に至り、最高裁の論調に微妙な変化を感じるよことがある。

蟻の一穴が、不必要に丈夫な壁を壊す日が来るかもしれない。

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