2008.01.08 火曜日 16:03
法理と心情の狭間で
ハードル高い危険運転致死傷罪(毎日新聞) Yahoo!ニュース
取り敢えず目についた記事を引用したが、なんともコメントし難い判決になった。昨年、裁判所が訴因として業務上過失致死傷の追加を促した時点で判決は決まっていたとはいえ、いざ業過で7年半が出てみるとやりきれない気分がする。
焦点の危険運転致死傷罪は、以下のように定める。
判決では、「正常な運転が困難な状態」という要件を厳格に適用した結果、この条文ではなく、業務上過失致死傷($211)で有罪となったわけだが、やはりこの条文の構成に無理があると言わざるをえない。悪質な交通死亡事故の多発と、量刑の軽い法体系に対する強い批判を受けて追加された条文であるから、検察が同条で起訴した場合、裁判所が認めないというケースは少ないようだが、被害の大きさと、事故発生後に被告人の採った盗人猛々しい行動とで世間の耳目を集めた本件において、危険運転罪が適用できなかったという事実は重い。上級審の判断も見たいと思うが、早晩、同条の改正論議が沸き上がるだろう。
感情に走り、単に重罰化を押し進めても、悪質な飲酒事故がなくなることはないだろう。他の罪種との刑の均衡を損ねるようなことになると、また別の問題が生じる。とはいえ、市民の素朴な処罰感情に適わない法律が堂々と存在することは、法に対する市民の信頼を著しく損なう。裁判員制度実施を目前にして、立法、司法双方の責任は嫌が上にも重い。
取り敢えず目についた記事を引用したが、なんともコメントし難い判決になった。昨年、裁判所が訴因として業務上過失致死傷の追加を促した時点で判決は決まっていたとはいえ、いざ業過で7年半が出てみるとやりきれない気分がする。
焦点の危険運転致死傷罪は、以下のように定める。
第二百八条の二 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
判決では、「正常な運転が困難な状態」という要件を厳格に適用した結果、この条文ではなく、業務上過失致死傷($211)で有罪となったわけだが、やはりこの条文の構成に無理があると言わざるをえない。悪質な交通死亡事故の多発と、量刑の軽い法体系に対する強い批判を受けて追加された条文であるから、検察が同条で起訴した場合、裁判所が認めないというケースは少ないようだが、被害の大きさと、事故発生後に被告人の採った盗人猛々しい行動とで世間の耳目を集めた本件において、危険運転罪が適用できなかったという事実は重い。上級審の判断も見たいと思うが、早晩、同条の改正論議が沸き上がるだろう。
感情に走り、単に重罰化を押し進めても、悪質な飲酒事故がなくなることはないだろう。他の罪種との刑の均衡を損ねるようなことになると、また別の問題が生じる。とはいえ、市民の素朴な処罰感情に適わない法律が堂々と存在することは、法に対する市民の信頼を著しく損なう。裁判員制度実施を目前にして、立法、司法双方の責任は嫌が上にも重い。
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